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# 日本経済

参院選後の経済政策、安倍政権が「絶対にやらなければならないこと」

消費増税の悪影響を軽微に抑えるために

野党のダメさに救われた与党

参院選が終わった。「れいわ新撰組」や「NHKから国民を守る会(N国)」の議席獲得といったサプライズが局所的にはみられたものの、安倍政権を揺るがすような結果にはならなかった。個別の候補者をみれば悲喜こもごもという面はあったのかもしれないが、全体的にみれば「無風」に近かったのではなかろうか。

事前の予想では、安倍政権の消費税率引き上げに対する批判票が野党に流れる可能性が指摘されていた。

確かに、与党で国会での改憲発議が可能な3分の2の議席は獲得できなかったという点で与党が勝利したとはいえないが、改憲に比較的前向きだといわれる「日本維新の会」の議席数を加えると、改憲可能議席数まであと4議席まで迫っており、今後のやり方次第では、改憲発議は十分可能であると考える。その意味では、今回の参院選を総括すると、安倍政権は「負けなかった」と言っていいだろう。

今回の参院選において、立憲民主党をはじめとする野党は、与党に対抗して消費増税反対で足並みをそろえた。各種世論調査では、10月からの消費増税については、半数超(55~60%程度)の有権者が反対の立場だったので、選挙結果を考えると必ずしも消費増税反対の有権者がこぞって野党に投票したわけでもなさそうだ。

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その理由ははっきりしているのではなかろうか。大阪で一応の実績を上げてきた「日本維新の会」を除けば、旧民主党を中心とした野党勢力が政権奪取したところで本当に消費増税を見送ることができるかどうかが疑わしいからである。

 

旧民主党は、政権奪取を果たした際のマニフェスト(いまや死語になった感がある!)で、消費増税に頼らない財政再建を公約した。その帰結は、見かけ倒しの単なるパフォーマンスに終わった事業仕分けと野田政権下での消費増税決定(3党合意)であった。

そして、今回、立憲民主党は、介護・医療・保育分野での賃上げ、農業者戸別所得補償、年金の最低保障機能導入、公立小中学校の給食無償化などの公約を打ちだすと同時に消費増税反対の立場をとったが、消費増税に代わる説得的な財源を提示することができなかった。民主党政権の失敗の反省はなく、何も進歩していないことが露呈した。

国民民主党も同様である。国民民主党は、所得税の累進強化や金融資産に対する課税に加え、法人増税を打ち出した。このうち、前二者(所得税、金融資産課税)については考える余地があるが、法人増税はあまりにポピュリスト的な政策である。

法人増税は、「大企業を中心に租税回避が行われている」という議論を意識すると同時に、「家計重視」の姿勢をアピールすることで庶民受けを狙ったものだと推測するが、株式会社制度、及び株式市場の現状を考えると、多くの企業は法人増税による収益減を、労働コストの抑制によって相殺しようとするだろう。

「働き方改革」を利用した残業規制による残業代の減少は既に賃金の伸び率低下に表れているが、法人増税の実施は「働き方改革」を利用した労働コストの引き下げをさらにエスカレートさせると同時に、正規社員から非正規社員への雇用形態の振り替えや、アウトソーシングや省力化投資増などの動きも加速させるだろう。

これに加え、法人増税を財源に最低賃金の大幅引き上げを実施しようものなら、雇用環境は一気に悪化に転じ、日本経済は間違いなくデフレに真っ逆さまに落ちていくだろう。

この、「代替財源として法人増税を」という発想は、かつてのマルクス主義の「資本家vs.労働者」の亡霊であり、家計の世帯主の多くが企業で雇われていることを忘れている。全共闘世代のルサンチマンを若い党首が継承しているのをみて驚愕を禁じえなかった。

このような「企業を敵対視」した政策がもたらす不幸はすでに「リベラル政権」が支配する国で確認することが可能である。経済状況を無視した大幅な最低賃金引き上げで景気が急速に悪化しつつある韓国やメキシコはその好例であろう。

 

そして、最低賃金引き上げや法人増税による「負のスパイラル」は資本主義ではある意味当然の帰結であると考えるが、これを防ごうとするならば、民間企業の経営に国が介入するしかない。

国が企業経営に介入することによる労働政策(雇用の確保)、所得政策(賃金の確保)は、ナチスドイツを始めとする戦前の国家社会主義の典型的な経済政策である。ちなみにこのような政策思想は今回、2議席を獲得した「れいわ新撰組」の公約にも見られた。

その意味で、今回の参院選では、10月からの消費増税をほぼ決めた安倍政権に対する批判票の行き場がなくなってしまったのではなかろうか。やはり与党は野党のダメさに救われた。さすがに「消費増税が嫌だから国家社会主義を選択します」という有権者は一部のカルト以外にはいないだろう。

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