反発と羨望が入りまじる「香港デモ」中国社会の複雑な受け止め方

「奴隷のままでいたい」と願っている?
古畑 康雄 プロフィール

「尊敬、羨望、悲哀」

上海の文化業界で働く30歳の蘇奇という女性は、6月9日のデモの写真を微信で見たとして、次の4つの「とても」、つまり「とても震撼し、とても尊敬し、とても羨望し、とても悲哀を感じた」の思いが生じたという。

「現在中国で起きている多くの問題のいずれもが、正常な国家ならば多くの人が街頭で反対を表明するようなものだ。だが我々はそれをすることができない。だから香港人が街に出て自分たちの意見を表明することに、わたしたちは当然ながら羨望を感じている。」

中国人は一般に自分の利益に関わることだけに声を上げるが、逃亡犯条例は多くの香港人に直接関係するわけではないのに声を上げたことに、蘇さんは敬意を抱いているという。

 

さらに抗議の主体が若者であることにも驚いていると述べ「現在、中国の若者は政治に関心を持たない。だが香港の若者がこれだけの情熱を持っているとは思いもよらなかった」と語っている。

ただBBCによると、一方で抗議参加者の暴力がエスカレートしているとして反対の声もあるという。張維という上海のメディアで働く女性は、行政長官が条例案を事実上取り下げたのだから、デモ隊はこれ以上エスカレートすべきでないと考えている。

「彼らの多くの行動、例えば警察を襲う、立法会(議会)に突入するといった行動は暴動とみなすことができる。それなのに暴動との位置づけを撤回せよと要求するのは、筋が通らない」「民主とは、騒げば飴が与えられるというものではない。」

暴力的手段を使うべきかについて、蘇奇さんは自分の周囲では2つの見方があり、「相手が譲歩しないのだから必要なら(実力行使などの)手段を使ってでも権利を勝ち取るべきだとする一派と、暴力は使用すべきでない、彼ら若者が傷つくのが心配だという一派に分かれている」と述べ、このように語っている。

「六四(天安門事件)のような事件が起きてほしくない。だがやむを得ない時もある。闘争には犠牲がつきものだから。」

香港問題を見る中国の人々の声はこれ以外にも香港のネットメディアなどでも取り上げている。中には問題の核心を突いた興味深い分析もあるが、紙幅の関係もあり、今後機会があれば取り上げたい。