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地面師事件の積水ハウス、エース社員「退任」で広がる社内不協和音

内紛騒動は終わらない

エース社員が突然の退社

東京・五反田の土地をめぐって、大手不動産会社・積水ハウスが50億円以上を騙し取られた地面師事件。いまだその「後遺症」に悩まされる同社の業績が振るわない。このほど発表された受注速報を見ると、その落ち込みぶりが顕著なのだ。

「主力事業である戸建住宅の6月の受注速報を見ると、前年同月比で10%も落ち込んでいます。同じく事業の柱である賃貸住宅も前年割れという散々な結果です。そもそも昨年の同時期は、地面師事件などの混乱で業績が大きく落ち込んでいた。それよりもさらに今期は落ちているということで、事態は深刻です」

そう語るある積水ハウス社員によれば、「いま一部の営業社員たちのモチベーションが下がっていることが業績不振の一因にある」と語る。しかもその背景にあるのは、地面師事件以降に広がりつつある不可解な人事によるものだというから穏やかではない。

実際、この5月に積水ハウスが発表した人事に社内が騒然とした。常務執行役員で積和ハウジング事業部長の藤原元彦氏が、6月1日付で突然退任したからだ。

 

別の積水ハウスの社員が言う。

「驚きました。藤原氏はまだ56歳。若くして43歳で本部長となった戸建て営業のエース中のエースです。首都圏の要の神奈川営業本部長も務めたほどで、政財界へのパイプも太い。有益な人材の突然の退任だけに、社内で『粛清人事か?』と戦慄が走ったのです」

複数の関係者によれば、藤原氏の退任理由はあくまで「親の介護」。自らの申し出だったというが、ある社員は「それを真に受ける者はいない」という。

同社のある幹部も言う。

「粛清との噂が広がるのは、藤原氏は前会長の和田勇氏にかわいがられていたからです。和田氏は積水ハウスを2兆円企業に押し上げた中興の祖。とにかく現場が好きで、退任直前まで国際事業を率いてトップ営業で世界を飛び回っていた。藤原氏も同じく現場好きで、実直で曲がったことが嫌いな性格。それだけに和田氏とウマが合った。

ところがわが社が地面師事件に巻き込まれ、その全容解明に積極的だった和田前会長が阿部俊則現会長らによる内紛劇で失脚して以降、藤原氏を取り巻く環境は様変わりしてしまった。突如、神奈川から大阪の本社に異動させられた時には、現経営陣の監視下に置かれるようになったと噂されたものです」

今回のエースの退任人事をめぐっては、さっそく社内に動揺を広げているという。また別の積水ハウス幹部が言う。

和田派の一掃が進むのではないかという懸念が広がっています。特に和田氏が急成長させた国際部門は現在、和田氏と志を同じくして取り組んできた勝呂文康取締役専務執行役員が担っているが、彼も次の役員改選での退任が濃厚とみられている。和田氏が突然失脚したことで、海外の顧客との取引は混乱しています。そのうえ勝呂氏までいなくなったら、国際事業はどうなるのかという不安が高まっている」