元経済ヤクザが、フェイスブック通貨・リブラを「テロ」と見る理由

狙いは「世界共通通貨」への下克上だ
猫組長(菅原潮) プロフィール

リブラが「テロ」である理由

80年代にイギリスとアメリカで起こった不景気、「スタグフレーション」への対策として、あらゆる分野で規制緩和が行われた。金融規制を緩和し続け市場に任せ続けた結果、2000年代には「リーマンショック」などいくつかの金融危機が連鎖する。

一方で、こうした金融危機が深刻な世界恐慌にまで進まないのは、ドルを中心とした現在の金融体制が、ショックをなんとか乗り切る程度の安定性を持っていることの証左でもある。究極の金融自由化をもたらす「リブラ」は、新たな金融危機を誘発するばかりか、現在の安定的な枠組みそのものを揺るがすことになるだろう。

「リブラ」の登場は「ショック」というより、既存の仕組みを崩壊させる「テロ」と呼ぶべきものだと私は考えている。

一方で、「リブラ」が現在の基軸通貨体制にとっての脅威となることにより、ドルを代表とする主要通貨のCBCC実用化が加速すると私は予想している。「Facebookにやられるくらいなら、我々が先にやる」と考えるのは自然なことだろう。

これほどの深刻な問題であるにもかかわらず、残念ながらこの国では「リブラ」についての議論はほとんど起こっていない。その代わりに「仮想通貨」というキーワードだけでビットコインが乱高下、その挙動に投機家たちが一喜一憂しているという、実に情けない状況だ。

「ビットコイン」などマイニングを必要とする現在の仮想通貨には、そもそも価値などない。やがて主要通貨がCBCC化すれば、その価値は「こども銀行券」そのものになるだろう。

パリで開催され7月18日に閉幕したG7財務相・中銀総裁会議でも、「リブラは国家の通貨主権や、国際的な金融政策に影響を与える」という認識で一致、「(リブラは)最高水準の規制を満たし、信頼されるものでなければならない」と議長が総括した。

では、Facebookは「リブラ」に対する国際社会の規制を受け入れるのか。その鍵を握るのが、「暴力」だ。

世界最古のコインは、紀元前6世紀頃にアケメネス朝ペルシア(トルコ)で鋳造されたとされる。王朝がエジプトからイラン高原、インドのインダス川流域を支配し、史上初の大帝国となったことと、コインが発明されたことは無関係ではない。帝国はコインを発行し、暴力を背景にその支配域にコインの使用を強要することで、徴税や軍費を容易に調達することを可能にした。

1944年に「ドル」が基軸通貨となった大きな理由は、第二次大戦末期に米軍という世界最強の「暴力」を保有したアメリカに「金」(ゴールド)が集まったからだ。

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明日滅びるかも知れない国より、強い暴力で守られている場所に資産を置きたいと考えるのは、当然のことである。通貨を根底で支えるものの正体が「暴力」であることは、こうした歴史からも明らかだ。