Photo by gettyimages

元経済ヤクザが、フェイスブック通貨・リブラを「テロ」と見る理由

狙いは「世界共通通貨」への下克上だ

財務大臣・中央銀行総裁会議、大阪サミットの両G20の狭間となる6月18日、Facebookが独自の仮想通貨「リブラ」の開発を発表した。金融ガラパゴスのわが国に住む「投機家」は、この影響で乱高下するビットコイン市場に一喜一憂するありさまだ。

しかし、そうした人たちは、「リブラ」が金融の秩序を根底から覆すリスクを持つことを理解していない。「リブラ」は、テロ抑止のための金融規制ばかりか、現在の安定した金融環境を崩壊させる――黒い国際金融に生きた元経済ヤクザの私が、新たな次元に入った「仮想通貨」の未来を教えよう。

7月26日に拙著『金融ダークサイド 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界』(講談社)が発売される。

日産元会長カルロス・ゴーン氏の事件を端緒に、「マネーロンダリング」の深奥をつまびらかにし、新次元の「マネー」の在り方について解説するほか、私自身の資金洗浄の手口を明かした、挑戦的な内容となっている。ぜひお手にとっていただきたい。

「黒いマネー」はどう動くのか

G20で私が注目したのは、マネーロンダリング規制についての新たな取り組みだ。各国トップ会議のたびに、マネーロンダリングに対する規制強化がテーマになる理由は、テロ対策のために他ならない。

武器の調達はもちろん、実行者の選択、訓練、攻撃、逃走中の資金から、犯人の家族に対するケアに至るまで、テロには莫大な資金がかかる。一方で現在のテロは予告なく起こる。そこで、最も有効なテロ対策となるのが、犯行グループの資金の流れを常時監視、規制することだ。9・11アメリカ同時多発テロ事件以降、国際社会はこれに取り組んでいる。

テロリスト側が規制をくぐり抜けようと日夜、新たな資金移動の方法を開発している一方で、国家や国際社会は常に黒いマネーの移動を防ぐための規制を強化しているわけだ。

Photo by gettyimages

こうした規制はAML/CFT(Anti-Money Laundering=マネーロンダリング対策/Counter Financing of Terrorism=テロ資金供与対策)と呼ばれ、その中心となる組織が、政府間機関FATF(ファトフ=マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)だ。

特に9・11以降は、被害国であるアメリカの強い働きかけもあり、国際的なAML/CFTの取り組みはテロ抑止に大きく寄与している。あまりに厳しい規制が民間の資金移動を阻害することもあり、問題となっているほどだ。

 

2017年、私は、どれだけ国際金融での資金移動が困難になっているかを知るために、かつて「マネーロンダリングの聖地」とされていた香港のHSBCから日本の自分の口座にテスト送金をした。こうして国際社会の「ルール」を肌身で知ることが、闇社会を生き抜くためには不可欠なのだが、このときはさすがに驚いた。

8800ドル(約93万円)、15000ドル(約160万円)、150000ドル(約1600万円)の計3回日本に送金したうち、無事指定口座に入庫されたのは最初の8800ドルだけだったからだ。

この時は完全にクリーンなマネーだった。つまり、完全に合法な個人の送金でさえ監視下に置かれているということ。これが現在の国際間送金の現実だ。