ハイエンドトラベルは
ギラギラした浪費の旅ではない

世界で最も権威あるといわれるラグジュアリートラベル商談会「ILTM(International Luxury Travel Market)」の事務局によると、全世界の旅行者のたった3%に当たるハイエンドトラベラーが、全世界の旅行消費全体の4分の1を占めています。

国内ではもっぱら富裕層=爆買いの中国人という偏ったイメージが定着しているように感じられますが、冒頭に書いたように、世界のハイエンドトラベル市場の7割弱をアメリカやヨーロッパのマーケットが占めています。その背景には、アメリカは景気がよく、桁違いの富裕層が多いこと。そしてアメリカ人は、時間の使い方が上手だと言われていること。またヨーロッパ人は総じて知的レベルが高く、異文化に関心が高い人が多い。そして歴史があることから、ハイエンドトラベルの楽しみの上位に挙げられる「食」の本質もわかるのです。

このようなハイエンドトラベラーは、経済的余裕のある人たちには違いありませんが、ギラギラした富裕層とは違います。彼らの多くは、寛容で懐が深く、物知りで、意外とシンプルな生き方をしていて、人を資産や肩書などでは判断しないような人格者です。そして、どのような状況もポジティブに受け止め、トラブルも楽しみに変えられる、人生の楽しみ方を知っている人たち、それが真のハイエンドトラベラーの姿です。

-AD-

さらに、彼らの旅の目的は「浪費」ではなく、「自分を高める特別体験」だとILTMのレポートは伝えています。

「自分を高める」ことを突き詰めるためには、高額な費用をも意に介さないのです。一方で、価格が安くても本物でストーリーがあり、自分を高められると感じるコンテンツや体験であれば、それもまたハイエンドトラベラーを魅了します。たとえば1杯700円のとてつもなく美味しいラーメンのように。

予防接種を数種類受け、
植物学者と共にアマゾンを旅する

最近はフランス領ギアナでの熱帯雨林の生態を学ぶ旅が興味深かったとフィリップ・ドルナノ氏

では、実際にそのような旅をしているハイエンドトラベラーはどのような旅の哲学を持っているのでしょう。ここからは、ハイエンドトラベラーを代表する人物の旅行に対する哲学から、これからの旅を考えていきたいと思います。

話を聞かせてくれたのは、フランスの伯爵家で、ラグジュアリー化粧品ブランドの創業家でもあるフィリップ・ドルナノ氏。これまで出会ってきたトラベラーの中で、最もダイナミックで冒険心旺盛、旅を存分に人生に取り入れているグローバルリーダーです。フランスではほとんどの人が4週間は夏休みを取りますが、フィリップは一年のうちの11週間を国外出張に、7週間を家族とのバカンスにと、年間3分の1以上を旅路で過ごしています。

フィリップが旅に求めることは、異なるライフスタイルを発見し、家族と新たな思い出を紡ぐこと。自分たちの食文化と異なる料理を食べ、冒険的な体験をし、その土地の色彩、空気感などと自分が繋がることが重要だと言います。

「世界の複雑さへの好奇心と理解を持つことは、私自身を高めてくれる。なるべくいろいろな大陸や国に足を運び、違う文化や文明に触れるようにしている」として、バカンスでは〝なぜ、どのように旅するか〟がとても重要になってくるとフィリップは言います。

-AD-

これまで訪れた中で特に印象的だった旅は、セヴェンヌ山脈やモロッコ沿岸をそれぞれ5日間かけて徒歩旅行したこと。それにスンバ島でのサーフィン、コスタリカや南アフリカのジェフリーズベイを訪れた時。そして1995年にラグビーのワールドカップのオープニング・トーナメントに出場した時です。

最近では、フランス領ギアナでの熱帯雨林の生態を学ぶ旅がとても興味深かったと言います。予防注射を数種受け、防水ウェアに身を固めて、情熱的で知識豊かな植物学者にアマゾンを案内してもらったそうです。そこには1キロ四方の中に、なんとヨーロッパ中の植物の種類を超える数の植物が生育していました。