# 政治・社会

民家で行われた腎臓移植手術の後、夫は再び腎臓を取り出された

臓器移植の闇を追って・その2
高橋 幸春

「海外で移植を受けたレシピエントは病院が診てくれないと、Nから聞かされていたのです」

実際、私の取材に対して江川裕人移植学会理事長は、渡航移植患者に対して「警察に通報してかまわないか、了解を得た上で診察している」と答え、「恫喝」とも思える言葉を、渡航移植患者に投げつけている。

中国で移植を受けたレシピエントがそうした言葉を浴びせかけられた事例もある。中国で移植を受けた患者が浜松医科大学で診療拒否に遭ったとして、国立大学法人浜松医科大学を訴え、最高裁で争っているケースもある。

 

宇和島徳洲会病院の万波誠医師は、人道的な立場からやむをえず、海外で移植を受けた患者の治療にもあたっている。

「山川さんを見た時は、もうこれは無理ではないかと誰もが思った。私自身もよく生きてきて帰ってこられたと思いました。手術した傷口から膿が流れ出ていました」

傷口を大きく開いて膿を出した。その一方で山川さんは透析も受けなければならなかった。

感染症にかかっていた。その菌を突きとめなければ、治療ができない。

「日本ではほとんど見られない菌で保健所に届ける必要があり、隔離病棟に入ってもらうしかなかった」

「何から何までウソ」

移植手術は術後の管理が極めて重要なものになる。免疫抑制剤を投与しているために、免疫力が弱まり感染症を引き起こしやすくなる。

「移植した後は、時間をかけてレシピエントの状態を見極めながら治療する必要がある」

しかし、山川さんは移植し、1週間後には移植した腎臓を摘出している。その1週間に腎臓を生着させようと大量の免疫抑制剤が投与されたと思われる。さらに民家を改造した「クリニック」で移植を受けている。

術後も「ゲストハウス」と呼ばれる家で過ごしている。衛生状態は決していいとは言えない。その証拠に、山川さんと同時期に移植を受けた患者3人も感染症を引き起こしていた。

彼らは皆、術後十分な治療を受けないまま帰国している。

山川さんはなんとか一命を取りとめることができた。

「Nの言うことは何から何までウソでした。海外で移植を受ければ、レシピエントに最適なドナーを見つけられるとか、夫にC型肝炎があったとか……」

宇和島徳洲会病院の検査では、山川さんからはC型肝炎のウィルスは検出されていない。

「万波先生とは懇意にしているから、病院に飛び込んでいけば、大丈夫だとNから聞いていましたが、万波先生はNとまったく面識がないことがわかかりました」

良枝さんは訴訟も視野に入れて今後の対応策を考えている。

前回も記した通り、パキスタン側の斡旋組織は私に5万7000ドルで移植を請け負うと伝えてきた。

山川さんは3年前に800万円をNに渡している。さらに6万ドルの現金を持ってパキスタンに行った。

「パキスタン側の責任者に5万ドルを私が直接渡し、1万ドルをNに渡しました」

Nの取り分は1万ドルだと、パキスタンの斡旋業者にいわんばかりのNの手口だ。

次回へ続く