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# 政治・社会

民家で行われた腎臓移植手術の後、夫は再び腎臓を取り出された

臓器移植の闇を追って・その2
世界で禁止されているはずの臓器売買。だが、患者の苦しみに付け込んで臓器移植を斡旋している業者も存在する。海外で移植手術を受けたという日本人は、結局、腎臓を取り出されて瀕死の状態になり……前回に引き続き、ノンフィクション作家の高橋幸春氏が、臓器移植の闇に迫った。

透析患者は毎年1万人ずつ増加

山川武さん(仮名)が糖尿病を発症したのは今から6年前、急激に症状が悪化し3年前から人工透析治療を受けていた。

「1日おきの透析治療で、透析を受けた日はぐったりして、理髪店に立つことができなかった」

理髪店の営業は、妻の良枝さん(仮名)ひとりで対応した。

「透析では治らず、根治的治療は移植しかないというのはわかっていました。最初は私の腎臓を提供して夫に移植させるつもりでした。でも夫が私の体にメスを入れさせたくなかったのでしょう」

 

移植医療は臓器提供があってこそ成立する医療だ。2018年、腎臓移植総数は1742例、そのうちわけは脳死下で133例、心停止下65例、生体1544例。

日本臓器移植ネットワークに登録しても、心停止、脳死からの移植待機年数は15年。

一方、生体腎移植は家族からの臓器提供を受けて行われる移植で、移植学会は消極的な姿勢を示している。健康な体にメスを入れる生体腎移植については、本来なら例外として認められるべきものだが、実際には約9割も占めている

毎年約3万人の透析患者が死亡する一方で、3万8000人から4万人前後の患者が透析を導入し、2017年現在、約33万4000人、毎年約1万人ずつ透析患者は増えている。

「拒絶反応」というリスクを防ぐために

山川さんは海外での移植を考えた。インターネットで調べ、2ヵ所の海外渡航移植斡旋組織のオフイスを訪ねた。

最初の斡旋組織からは、「メキシコで移植手術を受けるなら、費用は2100万円から1800万円」と告げられた。

「そんな大金、集められない……」

2ヵ所目の斡旋組織からは、ベトナムで移植手術が受けられるという説明を受けた。費用は1200万円。

山川さん夫婦は、2ヵ所目の斡旋組織代表Nと、2016年7月、臓器移植に関する「業務委託契約書」を取り交わす。「契約書」には費用は12万ドルと記載されている。

「頭金として日本円で800万円、残りは手術後に毎月10万円ずつ支払うという約束でした」

妻の良枝さんは当時のことを振り返る。

Nはベトナムの病院の写真を示し、その病院で移植が受けられると説明した。

「日本での移植はドナーとレシピエントの血液型が違っていても、HLAに問題があっても、移植を行う。拒絶反応を薬で抑えてしまうが、海外での移植はレシピエントにあったドナーを探すことができると、私たちに説明しました」

1960年代から1970年にかけて、日本国内で実施された腎臓移植では、多くのレシピエントが移植した腎臓が廃絶したり拒絶反応を起こしたりして、あるいは合併症で死亡するケースが相次いだ。