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今、アメリカで大きく盛り上がる「Woke Capitalism」とは何か

「平等」を求める人々と企業の動き

「Woke Capitalism」とは何か?

最近、アメリカの報道で“woke”という言葉をよく見かける。

“wake=起きる/目を覚ます”という動詞から派生したこの言葉は、「常に社会に対して政治的に覚醒した目を向けろ、そして行動しろ」という意味で、「社会正義」を実践しようとする「ソーシャル・ジャスティス・ウォリア(Social Justice Warriors)」の合言葉であり、今のアメリカで、社会と政治をつなぐ要の言葉だ。

たとえば、消費者向け商品/サービス提供企業が、人種的平等や社会的平等の実現を図る社会正義運動に参加する様子は、“Woke Capitalism”と呼ばれたりする。そしてその片鱗は意外にも、女子サッカーの世界で垣間見ることができる。キーワードは“Equal Pay”だ。

去る7月7日に行われた女子サッカーワールドカップの決勝戦で、アメリカはオランダを2-0で破り、前回2015年大会に続く2大会連続優勝を遂げた(4回目の優勝)。この「女性たちの偉業」については、公式スポンサーの1社であるNikeが、優勝後、即座に1分ほどのビデオを作ってアップしていた。

その優勝の立役者がメガン・ラピーノだ。

前回も出場し優勝を経験していた彼女は、今大会ではアレックス・モーガンとカーリー・ロイドとともに共同キャプテンを務め、チームの大黒柱であった。選手個人としてもMVPと得点王に輝いた。

メガン・ラピーノ〔PHOTO〕gettyimages

もっとも今大会において彼女を有名にしたのは、決勝戦の前の時点で、「(差別ツイートを連投する)トランプのホワイトハウスなんか行かない!」と公表したことだった(ちなみに前回大会での優勝の時には、オバマのホワイトハウスにラピーノは、チームメイトとともにでかけている)。

彼女としては軽く本心を吐露しただけだったのだが、むしろ、このコメントに即座にトランプが食いつき、彼の広報装置であるTwitterで不満と非難を表明してきたことに、当惑していた。

このトランプの非難に対して、ゲイであることを以前から表明している彼女は、帰国後、“Meet the Press”などテレビ番組に出演する中で、トランプの発言が、いかに自分たちのような人間を排撃しているかについて指摘し、彼の方こそ間違っていると強く主張した。

 

今回の大会では、トランプの介入により、自分自身の役割に、女性の雇用差別・賃金格差の撤廃を主張するだけでなく、LGBTQを含めて、より広く人びとの平等や寛容を説くことも加わったと彼女自身、感じたようだ。

その思いは、帰国後7月10日にニューヨークで開催された凱旋パレードの最後に、ニューヨーク市庁舎前で行ったスピーチの中で示されていた。

憎み合うことよりも、愛し合うことの重要さを讃えたこのスピーチの中で、彼女は、今回ともに戦ったチームがいかに多様で多彩であるか――「ピンクの髪もいれば紫の髪もいる。タトゥーやドレッドヘアの子も。白人もいれば黒人もいる、ストレートの子もゲイの子も」――を伝えた上で、単に自己主唱するだけでなく、相手の話にもきちんと耳を傾けるように促した。そうして、みなが良い人間になるべきだと訴えた。

明らかにトランプが茶々を入れたことが招いた内容であるようにも思えるが、髪をピンクに染めたゲイである彼女の出で立ちや、サッカーが、アメリカというよりもヨーロッパのスポーツ、とりわけイギリスのスポーツであることを思うと、不思議なことに、彼女の存在そのものがとてもイギリス的、というよりもUK的なパンクな空気を帯びているように見えてくる。

アメリカで「反抗」といえば、最近ではすっかり黒人発祥のヒップホップがまずは挙げられるようになったが、ラピーノは、ヨーロッパから戻ってくることで、ついでに白人の反抗文化であるパンクをも改めて持ち込んできた。そんな気にさせる、力強くやんちゃなスピーチだった。

女性からなるチームであっても、その中には非白人の選手もいればゲイの選手もいる。それらのメンバーが結束して優勝した、という事実を指摘することで、この多様なチームをまとめ上げるキャプテンシーの重要性を強調する。チームビルディングの重要さだ。

このように常にキャプテンシーの問題を抱えるからこそ、ミュージシャンに代わってアスリートが、とりわけチーム競技のアスリートが、社会正義の語り部として注目される時代になったのかもしれない。