1億円超の賠償金も…高齢者の暴走事故が家族を一瞬でボロボロにする

全部、保険でなんて思ったら大間違い
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親子2代で償い続ける

実際、裁判となると、あらゆる角度から賠償金を要求される。前述した、横浜で起きた美容室の事故も、その対象は休業中に発生した3ヵ月分の従業員の給料(451万円)や、弁護士費用(174万円)など多岐にわたる。

高額の賠償金の支払い命令が出てしまえば、保険に入っていてもカバーできない。しかし、加害者家族に支払い能力がなくても強制的に財産を持っていくのが、日本の民事裁判の「強制執行」、すなわち、差し押さえである。

まず、裁判所から執行官がやってくる。自家用車があれば「差し押さえ物件」と書かれた札を貼ってタイヤにロックをかけ、自宅にある家財などの財産も引き上げられ競売にかけられてしまう。場合によっては、一家まるごと「事故破産」する可能性もあるのだ。

 

たとえ家族に賠償責任が及ばず、同居する老親のみに多額の賠償金を払う必要があっても、非情な現実が待っている。

子どもは、法律的には「私は関係ない」と言える。しかし、現実はそうならない。資金力がない老親に、1億円以上の賠償請求がされれば、親が払えなくても監督責任を認めさせようと被害者から再び訴えられることもあるからだ。

つまり、身内が事故を起こしてしまえば、無傷で済むことはありえない。加害者家族として、被害者に償い続けなければならないことになる。

自動車事故ではないが、'07年12月に愛知県に住む重度の認知症患者が起こした事故は有名だ。

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徘徊していた当時91歳の男性が、JR東海道線の駅で線路内に入り、快速列車にはねられて死亡した。JR東海は、男性の遺族に対し振り替え輸送などに伴う損害賠償を求めた。

男性には'00年から認知症の症状が出始め、当時は85歳で要介護認定を受けた妻と、彼の長男の妻が介護に当たっていた。長男の妻が自宅玄関先で男性の排尿の後始末をして、男性の妻がウトウトしている間に裏口から出かけてしまう。

状況的に、男性を止めるのは極めて困難であることがわかるが、'14年の名古屋高裁は無情な判決を下す。男性の妻に監督責任を認め、約360万円の支払いを求めたのである(最高裁はJR東海の請求を棄却)。

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