キャッシュレス決済の終焉か…ようやく見えた7pay騒動の「深層」

なぜバーコード決済は乱立したのか
星 暁雄 プロフィール

なぜ「ICカード」を使わないのか

今回の記事で指摘したい2番目の問題は、「社会インフラとしてのキャッシュレス決済のグランドデザイン(全体構想)が見えない」ことである。

7pay事件の遠因として、スマートフォンアプリから利用するバーコード決済サービスが乱立していた事情がある。バーコード決済サービスは、JR東日本のSuicaのようなICカード型電子マネーと比べると技術的にはローテクだ。比較的短期間でシステムを作ることが可能なように思える。そこでセブン&アイHDは後発ながら急造でシステムを開発して参入し、結果、失敗を犯したのだ。

ここでひとつの疑問がある。なぜICカードを使わないのだろうか。

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日本では、Suica、PASMO、ICOCAのような交通系のICカード型電子マネーが広く使われている。ICカードは端末にタッチするだけで支払いができ、技術的にはスマートフォンアプリを立ち上げて使うバーコード決済よりも高度で便利な技術といえるだろう。当のセブン&アイHD自身もICカード型電子マネー「nanaco」を運用中だった。

ただ、ICカードは便利だが、小売り決済の分野では普及の度合いはいまひとつだ。NIRA総研の『キャッシュレス決済実態調査』(2018年9月)では、2018年8月に全国に住む20歳〜69歳の男女3000人に対してインターネット調査を実施した。個人の消費に占めるプリペイド式電子マネー(ICカード)の比率は5.0%と低い。さらにバーコード決済を含む「フィンテックサービス」は0.7%にすぎなかった。なお「仮想通貨」による決済は0.1%だった。

別の統計ではどうだろうか。2016年のプリペイド式ICカード型電子マネーによる決済金額(乗車利用を除く)は5兆1436億円(日本銀行『決済動向』)である。ICカード型電子マネーの使い道は、小売店と外食が中心と考えられるので、それぞれの数字を見てみよう。

 

同じ2016年の小売業の売上げ139兆8770億円(経済産業省の資料『平成28年小売業販売を振り返る』)と外食産業の売上げ25兆4446億円(日本フードサービス協会の『外食産業市場規模推計』)を合わせた合計は165兆3216億円。比較するとプリペイド式ICカード型電子マネーによる決済金額は3.0%にとどまる。

ICカード型電子マネーの普及がいまひとつな理由は複数ある。例えばSuicaでは、決済端末も決済手数料も小売り店舗から見て高いという課題が指摘されている。端末の低価格化などの取り組みを進めてはいるが、小売り市場に積極的に進出する姿勢ではなかった。