「私大文系に数学は不必要」という迷信が根強く残る3つの理由

日本は世界有数の「数学嫌い」国家だ!
芳沢 光雄 プロフィール

それらから断言できることは、「計算が他人より早いこと」、「マークシート式の数学問題で裏技を使って答えを当てたこと」、「意味を理解することなく『やり方』の暗記で正解を得たこと」などは、瞬間的な感激は得るものの、数学を面白いと思ったり、数学の意義を理解したりすることには繋がっていない──ということだ。

反対に、「定理や公式を導くプロセスを理解したこと」、「数学の身近な応用例を理解したこと」、「自分自身できちんとしたプロセスを積み上げて正解に辿り着いたこと」、「何人かで試行錯誤しながら統計データを集め、何らかの傾向をつかんだこと」などの体験をした学生たちは、数学に対する見方をガラッと変えており、上記表の3項目に関する意識は一気に良くなる。

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世間には、「数学が苦手な生徒はマークシート式だけ解ければよい。記述式の問題を解くのは、数学が得意な生徒だけで十分だろう」という困った意識が、数学を指導する者も含めて広く蔓延(はびこ)っている。

数年前に、これに関して桜美林大学の学生にアンケート式に尋ねたことがあるが、ある学生が述べた次の回答には目が覚める思いがした。

「確かに、試験の点数を取ることを考えるとマークシート式のほうが便利かも知れません。しかし苦手な者でも、本心では時間を掛けてでも数学を本当によく理解したいのです。『苦手な者は理解する必要はなく、答えの当て方だけ覚えて試験をパスすりゃいいじゃないか』という、苦手な者をバカにする態度がなくならない限り、大多数の生徒が数学好きになることはないと思います。理解の遅い生徒にマッチした教育体制もとれるように、日本の制度を変えてほしいです」

 

本年になってから算数・数学の教育に関する2冊の書を出版したが、それを決断させた動機の主たる部分は上の学生コメントである。

およそ算数・数学は「暗記」科目ではなく、「理解」の科目である。しかしながら、「理解」に関しては個人差が大きい。

ちなみに私が尊敬する数学者ガウスは、すでに3歳のとき石屋を経営する父親の計算を横からチェックしていた。ガウスのような生徒も、理解の遅い生徒も、それぞれに見合った数学の授業を受けられるように、抜本的な改革を目指してもらいたいという結論に至る。

しかし、年齢相応の画一的な教育システムを打ち破ることができるだろうか。はなはだ疑問である。