京アニ放火事件、犯人の「病気」を強調する報道への大きな違和感

「戦後最悪の事件」を理解するためには
原田 隆之 プロフィール

盗作されたのならば、争う方法はほかにもあるはずである。しかも、京都アニメーション社長の会見によると、苦情などが寄せられることはあっても、争議のようなものはなかったという。

本当に盗作の事実があるなら、まず被害を訴えたり、相手方と話合いをしたりするのが普通であるが、それはなかったということだ。

その一方で、事件との関連はわからないが殺害予告のようなものを受け取っていたという。もしもこれが、犯人によるものだとすると、相当な「準備期間」をかけて、一方的な憎悪を募らせていたことがわかる。

このような事実の断片をつなぎ合わせると、事件の大きさと、それに不釣り合いで不可解な動機の背後には、なんらかの病的なプロセスが想定されそうである。そのため、メディアは早くも病歴や通院歴があったことを報じている。

 

とはいえ、ここでは注意が必要である。まず、軽々しく病気を持ち出すことは、現時点では時期尚早である。また、重要なことは、仮に何らかの病的な要因があったとしても、それ単独では、事件の原因とはならないということだ。あくまでも、先に述べたリスクファクターを基盤にして考える必要がある。

つまり、元来犯罪傾向を有する者が、たまたま精神的な病気になって、それが動機や攻撃性などに影響を及ぼしてこうした大惨事へと結びついたという理解である。

犯罪傾向というのは、本人のパーソナリティや価値観が、反社会的な傾向を有しており、1つの手段として、犯罪に赴くことも厭わない思考や行動パターンのことである。

これらはまた、生まれ持った器質的な特徴と、周囲の環境の複雑な相互作用の結果、できあがったものである。