京アニ放火事件、犯人の「病気」を強調する報道への大きな違和感

「戦後最悪の事件」を理解するためには
原田 隆之 プロフィール

加害者はどんな人物か

現時点で、加害者とされる男は意識不明の状態で、詳細はほとんどわからないが、報じられたところによると、事件の直後に自作の小説を「パクられた」(盗作された)と叫んでいたという。

また、強盗での受刑歴があることや、職を転々としていたこと、近隣住民とのトラブルがあったことなども報じられている。

仮にこれらが事実だとすると、これは突発的な犯罪とは言えず、ある程度犯罪傾向や粗暴傾向のある人物による犯罪だと言えそうである。

前歴があること、しかも粗暴犯罪であること、不安定な職歴、対人関係の軋轢、これらはいずれも犯罪のリスクファクターであるからだ。

〔PHOTO〕gettyimages
 

しかし、不可解なのはその動機である。

彼が小説を発表したことや、執筆をしていたらしいことは、現時点では報じられていないし、その痕跡もない。まして、京都アニメーションほどの会社が、盗作をすることなど、にわかに信じがたい。それには、リスクのほうが大きく、何の益もないからだ。

さらに、百歩譲って盗作があったとしても、その動機と、これだけの大惨事を引き起こすほどの激烈な憎悪や破壊衝動とは不釣り合いだ。

この事件は、恨みのある誰かを狙ったというよりは、会社そのもの、そして日本のアニメ文化を破壊するほどの大きな憎悪と攻撃性に満ちており、多くのかけがえのない人命を奪ったことはもとより、まさに日本が誇る文化の発信地を、文字通りすべて灰燼に帰してしまった。