林眞須美の長男はこれまで何を思ってきたのだろうか…

和歌山カレー事件から21年、林真須美の長男がSNSで発信する理由

大きなバッシングに遭いながらも…

自治会が開いた夏祭りで、カレーにヒ素が混入され、67人が急性ヒ素中毒に陥り、うち4人が亡くなった「和歌山毒物混入カレー事件」の発生から21年――

“犯人”として死刑判決を受けた林眞須美(58歳)の長男(31歳)が、事件当時の家族や町の様子、死刑囚となった母への思い、父やきょうだいたちへの思いなどを綴った本『もう逃げない。~いままで黙っていた「家族」のこと~』を上梓した。

彼は、“カレー事件の犯人の息子”である自分が物申せば、世間の反感を買うということは百も承知で、すでにツイッターで発信を行っている。予想どおりのバッシングに遭いながらも、なぜ彼は発信し続けるのだろうか。

林真須美は本当に毒を入れたのか

「和歌山毒物混入カレー事件」が発生したのは、1998年7月25日のことである。

その1カ月後には、現場付近に暮らす林健治・眞須美夫妻が「疑惑の夫婦」として世間から注目を浴び、10月4日には、夫婦ともに別件逮捕された。

眞須美は再逮捕を繰り返され、12月末にカレー事件の容疑者として逮捕、起訴された。2009年に最高裁で死刑判決を受け、現在は大阪拘置所で暮らしている。

 

林眞須美の逮捕当時、一視聴者としてテレビや新聞の報道を見ていた私は、彼女が事件の犯人だと信じて疑わなかった。

その後、女性犯罪論の研究を始めた私は、彼女の接見禁止が解かれていた2005年から2009年にかけて文通を行い、拘置所へ面会にも行ったが、その間も彼女が犯人だと信じていた。

彼女は一貫して無実を主張していたものの、それは、“子どもたちに殺人犯だと思われたくない”という“母親としての”強い気持ちの表れなのだろうと考えていた。

「自分は無実」と信じている(真偽はどうあれ、彼女は“信じている”のだ)彼女と、彼女を犯人だと信じている私の間には、かえって事件の話題は上らず、中年の女同士、家族の話に終始した。

2009年に最高裁で眞須美の死刑が確定すると、私は文通も面会もできなくなった。事件についての取材をさせてもらったことのある眞須美の夫、健治も2009年に脳出血で倒れたため、林家との連絡は一旦途絶えた。

しかしその間、再審弁護団の活動により、眞須美の有罪の決め手となった「ヒ素鑑定」に重大な問題点が見つかるなど、「林眞須美冤罪説」を裏付けるような事実が次々と明らかになっていた。

なぜか報道されないそれらの事実をまとめたのが、昨夏上梓した拙著『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』である。