「宿題をやらない子」との契約締結
ただ、漢字ノートで火がつかない子どもたちも、もちろんたくさんいます。
要するに、彼らにとってヒット商品ではなかったということですね。
でも、ぼくは他にヒットするものがあればいいと思っています。
漢字ノートで競争するのではなく、体育の授業の運動だったり、図工の作品作りだったり、音楽の合唱だったりと、子どもたちが前のめりになっているものがあればいいと思っていました。もちろん、休み時間に遊びに熱中することも大歓迎です。
また、漢字ノートを含め、宿題を全く提出しない子どもももちろんいます。その子たちには、ズバリ尋ねます。
ぼくと「宿題をやらない」という契約を交わさない?
「私は今後一切宿題やりません」という契約を結ぶわけです。
「でもさ、君たちはさ、まだ未成年だよね。契約するには、親と君たちと担任のぼくとで”三者合意”が必要だよ」と親の合意を取り付ける条件を出します。と同時に、漢字を覚える価値も伝えます。
「漢字を書きながら熟語を覚えると、ボキャブラリーが多くなるから会話も豊かになるよ。身につくことはいっぱいある。ヨーロッパとかアメリカとか他の国にない文字だし言葉だよね。それでも、今はやりたくないというなら、契約しよう」
このように、クラス全体に説明します。
ごく少数ですが、契約を結んだ子はいました。
宿題を出さないことたちは「なんでやらないんだよ?」とほかの子に言われても、「いや、おれ、契約結んでいるから」と答えます。なので、後ろめたい気持ちを感じることなく、係活動や委員会活動など興味のあることに集中して取り組んでいました。
しかしながら、契約はどれも一時的なものに終わることが多かったです。
みんなもやっているからやったほうがいいという気持ちになったのか、それとも興味が湧いたのかはわかりません。
ぼく自身は、宿題をやらなくても、他のことでイキイキとした姿があればいいと思っています。だから、「みんながやっているんだからやった方がいいよ」とは言いません。ただ、事実として、この契約は長くは続かず、子どもの方から宿題を始めることが多かったのです。