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大宮エリーさんが語る、青春の「漠然とした孤独」を癒す10冊

たとえ親友がいなくたって

難しくないのに深い

脚本から絵画まで、いろいろな仕事をしますが、根底には小さい頃から好きだった童話があります。童話には、人を夢中にさせる何かが隠されていると感じます。

なかでも、『大どろぼうホッツェンプロッツ』は最高の一冊です。まず登場人物が少ないのがいい。6人くらいしか出てこないので、「これ誰だっけ?」と悩むことなく物語に没入できる。それでいてストーリーに厚みがあって、大泥棒と彼を捕まえようとする少年たちの知恵比べに魔法使いや妖精までからんできて、最後までわくわくドキドキ。

昔、家庭教師で教えていた小学生が本を読むのが苦手だったので、この本を読み聞かせしたことがあります。すると彼は、すっかりこの本にはまり自分で読むようになりました。物事の深い内容が描かれていても、けっして難しくはない。そんな仕事をしたいと思う原点がこの本でした。

 

あしながおじさん』は子供のときに一度読んで挫折した本です。延々と手紙が続くのに飽きてしまったんです。ところが大学生のときに読み返したら、びっくりするくらい面白かった。

孤児のジルーシャが支援してくれるおじさんに手紙でいろいろなことを報告します。これが、自分本位の報告ではなく、「おじさまはどうお考えになるかしら?」など常におじさんのことを気遣っているのです。人に思いを伝えるというのはこういうことだったのかと納得しました。コミュニケーションで悩んでいる人がいたら、是非読んでもらいたいですね。

悩みといえば、私は、子供の頃から「存在していていいのかな?」と思うことが度々ありました。高校生のときに読んだ『パンセ』の「人間は考える葦である」という一節は、そんな自分の心もとなさを肯定してくれた思い出深いものです。

たくさんの人にこの本を読んでもらいたくて、初監督作品の『海でのはなし。』という映画のラストで、主役の宮崎あおいさんが『パンセ』を朗読するシーンを入れたくらいです。