撮影:花房徹治(講談社写真部)
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井上尚弥の父が語る「家族だからこそできること」とは?

井上真吾氏特別インタビュー その②
ボクシング井上尚弥選手を育て上げた父親でありトレーナー、井上真吾氏の特別インタビュー第2弾。5月18日に行われたエマヌエル・ロドリゲス戦を振り返った前回記事はこちら

「周りからの期待」というプレッシャー

――今回のトレーニングの最初の方では、井上選手のコンディショニングが悪く、石田匠選手や、アマの堤駿斗選手とのスパーリングでも不調だったとか。

真:本人もマスコミにそんなことを言っていましたね。でも、自分はそうは思っていなかった。あれは簡単な話で、メディアなんかに「前回は70秒KOだったので次は何秒」・・・みたいに煽られて、そうすると、やっぱり意識するじゃないですか。それでパワーに頼っちゃったんです。

だから自分、言ったんです、いったんその意識を外せよと。いいんだよと。たまたまあのときは、ああいう結果になったけど、次は長くなるかもしれない。でも、初心に返ればいいんだよと。

 

尚のパンチで心が折れて沈む選手もいれば、きついけど、頑張る選手もいるんです。そうすると、悪い意味で尚とかみ合ってしまったり、そういうことはあるわけで。でも、その時はパワーで押すのではなく、テクニックをチョイスすればいいだけなので、自分としてはなんともない。

外して打つ、外して打つ、そのようにして少しずつ崩してゆく。それだけなんです。難しいことなんか何にもない。でも、尚は周りの期待があるから、「倒さなきゃ」って頭が筋肉になっちゃって、悪循環になっていた。自分にはぜんぜん簡単だったですよ。

だから、実際、すぐ直ったじゃないですか。それは尚が、自分が言ったことをすぐに把握できたからなんです。

でも、たしかに親であって1から10まで見ている自分しか、やっぱりわからなかったでしょうね。だから周りが騒いでいるほど、自分は深刻なこととも思ってはいなかった。

たしかに、石田匠選手とのスパーの時は、マジ、ムカつきましたよ(笑い)。尚に対して。「おまえ、何やってんだ」、って。

ムキになった息子と不満気な父

ただ、その不調と言われたスパーリングだって、実際には尚が圧勝はしてるんです。ただ、自分が求めているスパーではなかった。それで、自分、すぐ帰っちゃった。

そしたらすぐ、尚から、「思い通りのスパーができなくてごめんね」、ってメールがあって、自分も、「でも、むずかしいことじゃないんだよ、考え方をリセットしてやればすぐ戻るんだよ」って言ってやったんです。で、その後、グアムにキャンプに行ったときにも、ちょくちょくそういう話をしてました。

――堤選手にも、けっこういいスパーをされたという報道もありましたが。

真:でもそれは、いま言った、グアムキャンプ前の1回目だけです。堤選手とは3回スパーをしましたが、1回目はさっきも言ったように、力ずくで行ったから相手も頑張った。でもグアムから戻ってからの2、3回目は技術で行ったからワンサイド。そのあたりはすぐ切り替えができました。

それに1回目だって、やられたわけではないんです。尚がムキって雑になったのでお互いが打って打たれて、尚もいつも以上に打たれたというだけで。