撮影:花房徹治(講談社写真部)
# 井上真吾 # 井上尚弥 # ボクシング

井上尚弥を育てた父が勝つために大事にしているものとは?

井上真吾氏特別インタビュー その①

ロドリゲス戦を振り返って

――まず簡単に、先だってのエマニュエル・ロドリゲスとの尚弥さんの試合を振り返っていただきましょう。

印象的だったのは、第2ラウンド、最初のダウンを左フックで奪ったときの位置どりです。ロドリゲスの左サイド、相手の打ちにくい位置に低い姿勢で入って、ロドリゲスが右を出しあぐねて、仕方なく左フックを出したところに、それよりも早く左フックを内側から、「ドン」。あのポジションからの左フックは、前もって狙っていたのでしょうか?

真吾(以下:真)あのパンチ自体というのであれば、たまたまです。試合の全般にわたって、尚がいい距離を取ることができていて、あの場面でも、いいポジションで中に入ることができた。そのとき、一番出しやすかったパンチがあれだった。躊躇なくいけたので、先に「ドン」と当たった。

 

ただいつも、対戦相手が決まったら、その相手に勝つための練習をして、その自信を持って試合に挑みます。その意味では、あの結末も自分には不思議でも何でもなかった。一か八かで当たったのではないですから。

だから自分は、なるべくして、ああなったとしか思わない。

相手が強敵であることもわかっていたから、第1ラウンドで実際そうなったように、もみ合ったりする場面も想定していました。その上で、いかにして、常に自分の距離を保つか、それがあの試合の鍵だったのですが、そこで尚の方が勝ることができた。

ロドリゲスが尚の距離を潰そうと1ラウンド、前に出てきました。だから尚の方が下がらされたと見た方もいたかもしれません。でもあれは、下がらされたのではなく、どうしようかなと、いろいろ試していたんです。

だから、1ラウンドは相手有利とつけた解説者もいたようですが、自分は、インターバルで尚に戻ってきた時に「どうだった?」と聞かれて、「取ってるよ」と答えました。

だって1ラウンドから、相手の嫌がるパンチって、尚の方が当たってるんですよ。相手のパンチは、ダメージを与えるパンチは尚には1つも当たっていなかった。たしかに尚にも固かった面はありました。けど、相手に手こずって下がっていたのではなかった。

出だしから想定内の試合運び

――ロドリゲスが意外と前に出てきたなという感じはあった?

真:それも想定内でした。むしろ逆にロドリゲスは力んでいるのかなと思いました。無理して前に出ているような。尚も、変に慌てることはなかったと思うし、ロープ際でも、練習通りにボディーワークを使って対応できていた。パンチも見えていたんで。

で、インターバルの時に尚が「パンチは大丈夫だよ」と言ってきたんで、自分もほっとして、「OK、だったらそのままでいいから、リラックスして行こうよ」と言いました。1ラウンドで、相当ほどけたと思います。

――すでに相手の解析は終わった?

真:だいたいは、体で感じたと思います。想定の範囲内、それを超えてはいなかった。ただ、最初は、相手を過大評価していくわけです。その上で相手のパンチ力を踏まえて「あ、これなら大丈夫だな、対応できるな」となった。