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毎日食べてもおいしいうどんやパスタ、味の「秘密」を科学してみた

麺の秘密は「小麦の性質」にあり!
うどん、パスタ、ラーメン……。我々の生活には欠かせないものになっている「麺類」。しかし、これほど不思議な食べ物も珍しいのではないでしょうか。
同じ小麦からできているのに、どうしてこんなにも様々な麺ができあがってしまうのでしょうか……?

そんな麺の秘密に迫ったのがブルーバックス7月新刊の『麺の科学』! 今回は、本書の前書きと後書きを再編集したWebだけの「特別版」を公開いたします!

「麺」とは、これすなわち「文化」なり!

麺というと、どんな麺をイメージされますか?

うどん、素麺、蕎麦、ラーメン、スパゲッティなど、私たちの生活には実にたくさんの麺があふれています。もう麺なしでは生きられない、といっても過言ではないほど、生活に溶け込んでいます。麺は単に「食べ物」というだけではなく、もはや「文化」となっています。

麺料理は、もはや「文化」だ Photo by gettyimages

ラーメンは、中国で生まれ、わが国で独自の発展を遂げ、まさに文化となりました。即席麺に至っては、世界の食文化を支えているといってもよいでしょう。

日本を含む東アジアでは、蕎麦粉や米粉、そしてラーメンの原料でもある小麦粉を使った多種多様な麺が食べられています。

イタリアには「パスタ」という壮大な食文化があります。「ショートパスタ」には、マカロニをはじめとして、ペンネ、フジッリ、ファルファッレといったさまざまな形状のものがあり、それぞれに独特な名称がつけられています。

また、細長い麺状のものでは、スパゲッティだけではなく、リングイネ、タリアテッレ、カペッリーニなどサイズ・形状に応じて多種多様な名称がつけられています。

私は最近研究者として、うどんに関わることが多くなりました。うどんは、小麦粉と食塩と水だけで作られるシンプルな配合の麺です。讃岐うどんのように歯ごたえのある麺から、伊勢うどんのように非常にソフトな麺まで、多種多様な食感のうどんがわが国にはあります。

同じ小麦粉から作られるうどんにこのような幅広い食感があるのはどうしてでしょうか。本書ではその秘密に迫ります。

「麺の匠」の疑問に答えてたどり着いたこと

麺の生産に携わっている方たちとの交流で、長年の経験に裏づけられた、「匠の技」とでもいうべきたいへん興味深いお話も聴くことができました。

筆者が食品の化学と工学に関わるようになってから、「麺職人」といわれる方々はご自身の匠の技の科学的な意味を求めていることを強く感じています。

腕によりをかけて作った麺の歯ごたえが強いのはなぜだろうか。素麺はなぜ保管しておくだけで歯ごたえが増すのだろうか。ゆで水によって麺の食感が変わるのはなぜだろうか。さらには国産小麦を使ったうどんの風味が強いのはなぜだろうか。これまで筆者はこういった職人一人一人の疑問に答えたいと努めてきました。

筆者はもともと「食品プロセス工学」といって食品の製造に関する技術分野が専門です。一方で、食品を高品質で製造するには食品の化学が重要であると考えてもいます。

職人さんたちの疑問に答えてきた結果、素麺、冷や麦、うどん、蕎麦、あるいはスパゲッティといった麺の品質特性について、ある一つの概念にたどりつきました。それは、小麦という植物は進化してきた厳しい環境で獲得した形質と深く関わっており、それが小麦粉の特性に強く現れている、ということです。

これさえ読めば「麺」のすべてがわかる!?

麺の科学』では、日本をはじめとする世界各地の麺について紹介しながら、その品質特性について、科学的な視点から解説を試みています。

第1章では、麺の原料として最も使われている小麦と、それ以外の麺用の穀物について解説します。