photo by iStock
# 政治・社会

パキスタンで腎臓移植手術を受けた日本人の悲劇

臓器移植の闇を追って・その1
世界で禁止されているはずの臓器売買。だが、患者の苦しみに付け込んで臓器移植を斡旋している業者も存在する。そして海外で移植手術を受けたという日本人は、意識不明の重体で帰国もままならず……ノンフィクション作家の高橋幸春氏が、臓器移植の闇に迫った。

禁止されているはずだが…

「腎臓を販売したい場合は、私たちの電子メールで私たちに連絡してください」(原文ママ)

腎臓の売り手を探すそのサイトの冒頭には、赤い文字でこう書かれていた。さらにその後にメールアドレスが記載されていた。

 

その一方、腎臓移植希望患者を募る説明も続く。

「もしあなた、またはあなたの親しい人は腎臓移植が必要ですが、提供候補者がいなくて困っている場合は、是非うちのサイトをご覧ください。そうすれば命を救うことになるかもしれません。当サイトではどうすれば適合するドナーが見つけられるのか、どこで腎臓移植手術が受けられるのか調べられます。」(原文ママ)

このサイトは、3ヵ月ほど前まで堂々と開設されていた。

メールアドレスのドメインはロシアを示す「ru」だが、移植手術を行うのはパキスタンの病院になっている。

どことなく違和感のある日本語の説明だ。おそらく自動翻訳機で日本語に直した文章が記載されているのだろう。

しかし、臓器を購入し、移植を希望する患者に移植斡旋をする臓器売買組織であることは明白だ。このサイトはロシア語、英語、スペイン語、韓国語、合計25ヵ国語の言葉に翻訳されていた。

臓器売買はどこの国にでも禁止されている。これはヤミの臓器移植を行う国際的なシンジケートのHPだ。実際にこのシンジケートを通じて腎臓移植を受けた日本人がいた。

日本では1997年10月16日、臓器移植法が施行された。これによって移植に限って脳死を人間の死と認め、脳死移植の道が開かれた。

22年の歳月が流れた。しかし、現在でもドナーが圧倒的に不足している現実は何も変わってはいない。

日本だけではなく、移植用の臓器は世界的に不足している。そのために2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が採択された。

「臓器取引と移植ツーリズム(臓器そのもの、ドナー、レシピエント、または移植医療の専門家が、臓器移植の目的のために国境を越えて移動すること)は、公平、正義、人間の尊厳の尊重といった原則を踏みにじるため、禁止されるべきである。

移植商業主義(臓器を商品として取り扱う方針や実践のこと)は、貧困層や弱者層のドナーを標的にしており、容赦なく不公平や不正義を導くため、禁止されるべきである」

現実的には、海外で移植手術を受ける患者も少なくない。そのためにイスラエルのように海外での移植を禁止した国もある。

しかし、日本では、それを取り締まる法律もなく、インターネット上に渡航移植を斡旋する複数の組織が堂々とホームページを立ち上げ、渡航移植患者を募っている。イスタンブール宣言に反する日本の渡航移植に世界から厳しい視線が注がれている

「7人の患者が移植を受けている」

前述のサイトは、ホームページを日本国外で開設し、移植を斡旋する組織なのだ。

私は患者家族をうたって、この組織に英文のメールを送ってみた。そして何度かメールやりとりしているうちに、日本にこの斡旋組織の窓口となるエージェントがあることもわかった。