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7割の病院がじつは赤字!「瀕死の医療機関」を救う新しい稼ぎ方

厳しい環境を生き抜く「戦略」とは
鈴木 尚之 プロフィール

事例1:病院Aのケース

新規ビジネスを始めた病院の事例を紹介しましょう。

病院Aは精神科の専門病院です。精神病院は長期入院患者が多く、10年以上入院している患者も少なくありません。しかし長期入院患者の中でも、一定の作業が可能な患者もいらっしゃいます。

実は、精神病院に長期入院している患者の中には、「居住・支援がないため」という理由でやむを得ず病院に入っているケースがあるのです(2014年の厚生労働省の調査資料によると、精神病院の長期入院患者のうち28.1%が「居住・支援がないため」という理由で入院しているというデータが出ています)。

 

そこで病院Aでは、そのような長期入院患者向けに賃貸住宅を用意し、該当の患者は退院手続き後、そちらへ入居いただきました。そうしたことで、新規の入院患者を受け入れられるようになりました。さらに、賃貸住宅に入居している患者に対しては訪問診療や訪問看護を実施することで、外来診療収益を大幅に向上させることに成功。賃貸住宅を作ってから2年間で、約2,000万円の負債状況から、約2億円の黒字化となりました。

さらに、医療法人としてリハビリを目的とした精神障がい者向けの精神科デイケア(障がい者向けの作業所)も新たに開始。賃貸住宅から、作業所に通ってもらうことで、長期入院を減らして収支改善することができ、かつ患者の社会復帰への道筋をつける前向きな取り組みとなっています。

なお、少し専門的になりますが、ここで「長期入院患者と収益率の関係」について説明しましょう。

●長期入院患者と収益率の関係
国は、医療費高騰の原因となっている、長期入院患者を減らす動きをしています。そのため、長期入院患者を抱えるよりも、急性期患者を受け入れたほうが診療報酬を得られます。
例えば、飲食店の場合、収益を上げようとすると、以下のようになります。

・客1人あたりの単価を上げて、回転率が悪くても収益を上げる
・客1人あたりの単価は据え置きにする分、回転率を上げて収益を上げる

病院は、飲食店のように自ら単価の調整ができない業界なので(診療報酬)、ベッドの回転率を上げる施策を取ります(場合によっては、扱う診療科目等で収益を上げる方法もあるといえばあります)。

病院の近くに「高齢者住宅」や「賃貸住宅」を作ることでベッドの回転率を上げられるほか、病院に来てくれる外来患者だけでなく、在宅対応できる患者を増やすことができ、在宅対応の問題もクリアできます。

また、入居者にとっては、近くに病院があることで「何かあった時に頼れるところがある」という安心を手に入れることができます。