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# 飲食店

売上を追わない会社、佰食屋が「従業員の人間関係」を最優先するワケ

「スキル」なんか気にしない
「ランチのみの国産牛ステーキ丼専門店」「どんなに売れても1日100食限定」「営業わずか3時間半」「飲食店なのに残業ゼロ」「従業員の給料は百貨店並み」……。そんな奇跡のような経営革命を起こし、メディアで話題の「佰食屋」は、海外からの留学生や、障がいを持った人を積極的に雇用していることでも知られる。どのようにマネジメントしているのか、著書『売上を、減らそう。』を刊行したばかりの中村朱美社長が、舞台裏を語った。

マネジメントで大切な3つのこと

「佰食屋では、なぜダイバーシティを実現できたのですか?」。

これだけ世の中で「多様性の時代」と言われ、講演でも高い関心が寄せられていると感じます。経済産業省は「グローバル時代の競争戦略としてダイバーシティ経営を 推進するべきだ」として、「新・ダイバーシティ経営企業100選」を選定しています。ありがたいことに佰食屋も2017年に選出していただきました。

では、なぜ佰食屋はダイバーシティを実現し、さまざまな背景の人が働いているのか。「いいと思った人を採用していたら、たまたまそうなった」とは言うものの、1つ課題を挙げるとするなら、大切なのは採用した後。これだけのダイバーシティをどうマネジメントするのか、です。

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佰食屋が大切にしていることは3つです。

・転校生を紹介する先生のように新入社員を紹介する

・チームづくりは人間関係最優先

・つねにマイノリティの視点に立つ

年齢も置かれた環境も経歴も違う人が集まる職場。しかも佰食屋の従業員は、話すのが苦手だったり、人の前に立つと緊張してしまう人ばかりです。となると、すぐに配属されたお店に馴染めるかどうかが、その後の働きやすさにかかってきます。

ですから、従業員が出社する初日、わたしは必ず隣に立ち、その人の紹介をします。

その人がこれまでどんな仕事をしていたか。どんなことが得意で、どんなことに興味を持っているのか。どんな課題を抱えているのか。端的に話すのです。

たとえば、難聴を抱えるHさんは、シングルマザーとしても娘さんを育てあげ、いまはお母さんの介護もされています。こう話すと、とても苦労されているように感じるのですが、本人はとてもハキハキしていて、かつ包容力のある人です。

 

わたしはまず、みんなにこう伝えました。「彼女は耳が聞こえにくいから、声をかけるときは肩を叩きましょう。介護や体調不良で急に来られないときがあっても、わたしが代わりに働くから、みんな気にしないでください」。

Hさん自身が言いにくいことを先に代弁したのです。いわば、クラスに転校生がやってきたとき、先生がその子をみんなに紹介するかのように。

働いていくなかで、Hさんはアルバイトの女の子たちの面倒をよく見てくれるようになりました。

思春期の彼女たちはまだまだ働くことに慣れておらず、いろいろと困ることもありました。そんなとき、みんなの前でこう伝えました。「Hさんはマザー・テレサみたいに包容力のある人だから、なにか困ったことがあったら相談してみてね」。

アルバイトのなかには女子大生も多く、メイクも派手め、金髪、ちょっとやんちゃ気味な女の子もいました。そのとき女性の正社員はHさんだけだったので、その女の子が孤立してしまわないよう、Hさんにこっそりとお願いしたのです。

彼女が抱える課題を伝えるだけでなく、役割に名前をつけ、みんなに伝えたのです。