「松本さんと並んで肩を組みたい」

そんな松本氏に、私はこう提案した。

「じつは、今日やりたいことがあって。少し時間をいただけるなら、今から義足を履いてきます。松本さんと並んで立って、肩を組んでみたいんです」

私がそう言った瞬間、東野氏は「やりましょう、やりましょう」と喜んでくれた。

私と北村はいったん控え室に下がった。汗だくになってもいいようにスーツからTシャツへと着替えを済ませ、両足にシリコンライナーを装着する。そうして電動車椅子に乗って、スタジオに戻った。

いつも通り、義足は北村に履かせてもらうのだが、この日に限って手こずっていた。
「マネジャーが履かせて、だいじょうぶなん?」と松本氏が聞いてくる。

北村はなんとか義足をソケットにはめ込んだ。だが、北村はすでに相当テンパってしまっていたようだ。

膝の機能をオフにしたままだと、膝は身体の重みで折れ曲がってしまう。その時点ではまだ膝が曲がる状態での練習はしたことがなかったので、スイッチをオンにして膝が曲がらない状態にしなければならない。ところが一週間前のランニングスタジアムでの撮影時にはじめてかぶせられた外装カバーのために、それまでむき出しだった膝のスイッチの場所がわかりにくくなっていた。

スイッチが見当たらない……

北村の不安げなつぶやきを松本氏は聞き逃さなかった。
「スイッチが見つからない? いやいやいや。チェックインしたばかりのホテルの部屋やないんやから」

「コンセントどこにあるかわからない、みたいなね」

東野氏がすかさずフォローするが、私の耳にもほとんど入ってこなかった。北村の焦りがすっかり私にも乗り移っていたのだ。

こちらは3月に撮影したもの。マネジャーの北村氏は手慣れた様子で両足の断端にシリコンライナーをつける 撮影/森清