フランスの「育休充実化」政策がもたらした、予想外の「負の側面」

女性の就業率はむしろ下がった
山口 慎太郎 プロフィール

3人目の出産という要件はのちに緩和されて、1994年から、2人目の出産でも給付金を最大3年間受け取れるようになった。この育休改革以前はゼロだった給付金が、3年間ももらえるようになったのだから、これは大きな変更である。ある研究1では、この制度改革に注目することで、育休制度の充実が母親とその家族に及ぼす影響を分析している。

 

男女の役割が二極化する

この研究が注目したのは、研究の対象となる家庭の第2子が、この制度改革の「前」に生まれたか「後」に生まれたか、という点だ。第2子が、この制度改革直前に生まれた場合、この制度改革の恩恵をうけることはできない。一方、第2子が制度改革直後に生まれたならば、制度改革の恩恵を受け、給付金を最大3年間受け取れる。

したがって、第2子が制度改革直後に生まれた家庭と、直前に生まれた家庭を比較することで、「育休3年制」が若い家族にどのような影響を及ぼすのか知ることができるのだ。

こうした分析の結果明らかになったのは、あまりに充実した育休制度がもたらす意図せざる結果だ。育休改革の結果、第2子を出産した母親が出産後も就業する割合が16パーセントポイントも下落した一方、父親の労働時間は週あたり2時間半増加した。これは家庭内における男女の役割の二極化を推し進めたことになる。

母親の就業率が下がるのは、育児休業給付金の直接的な影響である。3年もの期間にわたって、家庭にとどまることに対して金銭的なインセンティブを付与したのだから当然といえば当然だ。また、育休期間が長くなるに連れて、外で働く習慣や、仕事で使う能力の一部が失われてしまい、仕事への復帰がますます難しくなってしまうことの影響もあるだろう。

一方、父親の労働時間が増えた主な要因は、「個人的な理由」による欠勤が減ったためであった。「個人的な理由」が具体的に何であるのかまではデータに記録されていないものの、子育てにまつわる事情であったのかもしれない。母親が家庭で子供の世話をしているならば、父親は子供のために仕事を休む必要がなくなるために欠勤が減り、結果的に労働時間が増えた可能性がある。

各家庭でどのように家事や子育てを分担するかはあくまで個人的な問題で、他人が口を挟むべきものではないが、社会全体として、男女の役割の固定化を避けるように制度設計することには一理あるだろう。そうした意味では、育休制度の充実は必ずしも望ましくない結果を生み出しうるのだ。