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フランスの「育休充実化」政策がもたらした、予想外の「負の側面」

女性の就業率はむしろ下がった

「育休3年」を導入したフランス

ワークライフバランスを求める「働く親」にとって、育児休業制度の充実は欠かせない。最近は、カネカやアシックスといった大手企業に勤める男性社員が、育休取得を理由に不利な取り扱いを受けたという訴えが報道で取り上げられたこともあり、男性の育休義務化が大きな話題となっている。

男性にとっての育休制度が実態として機能不全に陥っていることは確かであるが、女性にとっての育休制度は、ワークライフバランスを実現する上で十分なものになっているだろうか。日本では、原則として子供が1歳になるまで育児休業を取ることが出来るが、フランスなどの「育休先進国」では、子供が3歳になるまでの育休取得が認められている

 

もう忘れられてしまったかもしれないが、実は日本でも「育休3年制」が検討されたことがある。2013年に安倍晋三首相が育児休業期間を1年から3年に延長することを提案したのだ。

首相は、女性活躍推進のための施策としてこの政策を位置付け、「3年間抱っこし放題」というキャッチフレーズを掲げたものの、企業側はコスト増を理由に、この提案に難色を示した一方、労働者側からも3年もの長期の育休期間は必要ないという意見が多く、あまり歓迎されなかった。

しかし、このとき仮に日本でも「育休3年制」が導入されたならば、女性にとっての働きやすさはどう変わっていただろうか。そして、夫や子供たちといった家族には、どんな影響があったのだろうか。こうした疑問に対する答えを得る方法の一つは、すでに「育休3年制」を導入した国の経験に学ぶというものである。以下では、フランスの「育休3年制」が引き起こした意外な結果を紹介する。

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育児休業制度の2本柱は、「雇用保障」「給付金」である。前者は、育休取得を理由として解雇や減給といった不利な取り扱いをしないことを法制化したもので、後者は、育休前の所得と勤務状況に応じて、育休中に所得が補填される仕組みのことである。

フランスでは1990年代初頭には、出産後3年間の雇用保障が導入されていた。加えて、3人目の出産については、父母のどちらかがパートタイム、あるいは全く働かない場合、出産後3年間も定額の育児休業給付金が支払われていた。全く働かない場合に受け取れる給付金額は、平均的な月収の3分の1から半分程度であるから、なかなか魅力的な金額である。

安倍首相が提唱した「育休3年制」は、雇用保障を3年とするもので、給付金は最初の1年だけを想定しているが、フランスの制度はそれよりもかなり有利だ。