国民皆保険制度は崩壊の危機。理由は「高齢化」だけではない

“健康格差”はすでに始まっている
松村 むつみ プロフィール

協会けんぽ黒字も、国の補助がなければ赤字

健康保険組合も、近年財政難に苦しんでいる。加入者の減少や賃金の減少により収入が減ったためで、埋め合わせのために税金が投入されている。健康保険組合の解散も相次ぎ、全国健康保険協会(協会けんぽ)へと統合されてきた経緯がある(昨年度は、国内第2位の健康保険組合の解散があった)。

7月5日、協会けんぽが政府管掌時代を含めて過去最高の黒字(5948億円)を記録したことがニュースになった。加入者および賃金が増えたためと報道されたが、加入者増には、けんぽ組合の解散・協会けんぽへの統合によるものも含まれていると推察される。また、国庫補助がなければ依然として赤字であり、協会けんぽは2023年を境に赤字に転じるであろうと厳しい予測をしており、予断を許さない状況だ。

 

高齢化だけではない、医療費増大の要因

医療費の増大の大きな原因のひとつは、誰もが予想するとおり「高齢化」だ。2017年度では、75歳以上の1人あたりの年間医療費は約94万円にも上る。しかし、医療費の上昇の原因はそれだけではない。近年、医療の進歩はめざましく、技術の進歩も医療費上昇の一因となっている。

出典:「医療費の伸びの要因分解」厚生労働省保険局
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近年、最新の医療機器が相次いで開発され、新薬の開発もすさまじいものがある。例えば医療機器は、1970年代前半までは、CTもMRIも一般的には病院では使用されていなかったが、現在では一つの施設で一日何十件、場合によっては100件を超えるCTやMRI画像が撮影されており、短時間で体内を画像化して様々な情報を得ることができるようになった。PET検査(CTと通常同時に施行され、1回8万6000円程度)の件数も増加。最近はAIにも注目が集まり、画像診断のみならず幅広い診断への応用が期待されている。

当然、そうした新しい機器は高額であり、導入には億単位がかかることも珍しくはない。