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さらばVW・ビートル、いま明かされる「ヤナセ」との知られざる物語

「カブトムシ」の愛称で親しまれた
御堀 直嗣 プロフィール

「可愛らしい」だけじゃない

また、ビートルが人気だった理由には、ドイツのスポーツカーとして名高いポルシェとのつながりに信頼をよせる人が多かったことも挙げられる。

開発したのはフェルディナント・ポルシェ博士の息子フェリーなのだが、優れた性能への期待が日本人に強く浸透したのではないだろうか。というのも、ビートル自身はスポーツカーではなく大衆小型車であるものの、ポルシェ最初のスポーツカーである356は、ビートルの部品を活用していたからだ。

 

ビートルは、ドイツの速度無制限の高速道路であるアウトバーンも走行することを視野に開発されたはずだ。それが、カブトムシと愛唱されるあの独特な流線型の外観形状につながっている。後輪の後ろ側に搭載された水平対向4気筒空冷エンジンも、当時の貧弱なタイヤ性能で高速巡行するためには、エンジンの重さをタイヤにのせて路面に食いつかせ、走行安定性を高める狙いがあったことが伺える。

このように、当時の技術水準を背景として理にかなった姿が、あのカブトムシを連想させる造形なのである。単に可愛らしさを狙ったわけではないのだ。

ドイツ車らしい質実剛健溢れる車内/Photo by gettyimages

日本に輸入されたビートルは、まさに“ドイツ流質実剛健”そのもので、座席は分厚いビニール製で何万キロメートル走っても壊れそうになかった。

メーターは、速度計しかなく、燃料計も水温計もない簡素なつくりだ。エンジンが空冷のため、水温計がないのは当然だ。一方で燃料計がなければ、突然燃料切れを起こしかねないと懸念されるが、実は、燃料切れを起こしたら補助燃料タンクが装備されており、ペダル脇の足元のコックを爪先でひねると、予備の燃料がエンジンに供給される仕組みになっていた。