中国「世界最大」三峡ダムの崩壊リスク…当局説明を信じ切れない人々

飛び交う噂、消えない不安
北村 豊 プロフィール

どちらにしても寿命は数十年

ところで、1930年生まれで安徽省出身の劉崇熙(りゅうすうき)氏はフランスのパリ大学とパリ鉱業大学の博士号を持つ「ダムコンクリート(ダム用コンクリート)」の専門家である。

三峡ダムは1994年12月14日に正式着工したが、劉崇熙氏はその2年後の1996年に発表した論文で、中国で建設された大量のコンクリートダムが運用10~30年で深刻な状況にあると論じ、「重力式コンクリートダムである三峡ダムの耐久寿命は50年と予想される」と結論付けて物議をかもした。

当該論文は当時の全国政治協商会議副主席に提出された後に江沢民、さらには国務院総理の李鵬にも回覧されたが、李鵬は劉崇熙の結論に誤りがあるとして三峡ダムの建設を続行させたという。
 
李鵬は1994年12月14日の三峡ダム起工式で、「三峡ダム建設プロジェクトは“功在当代, 利在千秋(努力は当代のためだけでなく、今後の未来にも利益をもたらすものである)”」と述べた。

 

李鵬はソ連留学から帰国した後の1955年から1961年まで吉林省の豊満水力発電所の副所長兼技師長であった。豊満水力発電所は豊満ダムに併設されたもので、同ダムは三峡ダムと同じ重力式コンクリートダムで、日中戦争が始まった1937年に日本によって建設され、1943年に発電を開始した。

吉林省政府は2010年1月にその豊満ダムを老朽化により年末までに取り壊すと宣言し、下流に新たな豊満ダムを建設して2012年10月から運用を開始した。

初代の豊満ダムは1937年の竣工から2010年までの寿命は73年であり、1943年の発電開始から2010年までの寿命は67年だった。この間に1988年と1998年の2回にわたって大規模な修理を行っていた。

2009年に竣工した三峡ダムの寿命が何年なのかは予断を許さない。ダムコンクリートの専門家である劉崇熙が予想するように50年かもしれないし、豊満ダムと同様の70年程度かもしれない。ただし、三峡ダムが重力式コンクリートダムであり、コンクリートに寿命がある以上は永遠に存続することは不可能である。

一方、王維洛氏が述べているように、三峡ダムの堤体中に存在する空洞がひび割れを作ることで漏水が激しくなれば、三峡ダムが崩壊する危険性は増すことになる。

冷山氏が提起したような三峡ダムの堤頂に変形が発生しているかどうかは、現場で実地検証すれば容易に問題は解決するはずだが、中国の三峡関係組織がそれを実施しようとしないのは何かやましい所があるのではないかと疑いたくなる。

そうした最中に、三峡大瀑布風景区が一時営業を停止するというニュースが流れれば、疑心暗鬼はさらに強いものとなる。

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