中国「世界最大」三峡ダムの崩壊リスク…当局説明を信じ切れない人々

飛び交う噂、消えない不安
北村 豊 プロフィール

不良工事の可能性

ここで三峡ダムの構造を再確認すると、以下の通り。

a)形式 :重力式コンクリートダム
b) 堤頂長:2310メートル
c) 堤頂高:海抜185メートル
d) 堤高 :181メートル
e) 堤底幅:115メートル
f) 堤頂幅:40メートル

三峡ダムの建設を請け負った長江三峡工程開発総公司の資料で三峡ダムの断面図を見ると、上底となる提底(ダムの基礎)の幅は115メートルであるのに対して、下底となる堤頂の幅は40メートルで、上流側は垂直に切り立ち、下流側は斜面という台形を形成している。

その堤頂が上流側の貯水池に貯えられた巨大な水量の圧力に押されて41メートルも下流側へ移動しているというのが、ユーチューバーの林浩司氏の意見であるのに対して、三峡ダムを運営する長江三峡集団はダム堤体の水平移動は認めたものの、その移動幅は3センチメートル以内で、三峡ダムの安全性には全く問題ないと表明しているのである。

文頭に述べたように、重力式コンクリートダムは、主要材料であるコンクリートの重量で水圧等の外圧に耐え方式のダムである。

長江三峡工程開発総公司の資料によれば、三峡ダムの建設に使われたコンクリートの総量は2800万立方メートル。

工事の要求品質が高く、施工の難度も大きかったので、工事品質と工期を保証するために、ダムへのコンクリート流し込みにはタワークレーンによるコンクリートの連続流し込みを主体とする総合施工技術を採用したとある。

タワーの高さは200メートル前後、コンクリートの攪拌能力は2500立方メートル/時であった。

ちなみに、東京ドームの容積は124万立方メートルなので、三峡ダム建設に使われた2800万立方メートルのコンクリートは東京ドームの容積の22.6倍に相当する莫大な量であった。

 

さて、三峡ダムの研究で世界的な権威とされるのはドイツ在住で活躍する中国人水利専門家の王維洛(おういらく)氏である。

1951年に浙江省で生まれた王維洛氏は、1982年に江蘇省南京大学を卒業、1985年にドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州にあるドルトムント大学へ留学し、1987年に修士課程を修了し、1993年5月に工学博士号を取得した。現在は同じくノルトライン・ヴェストファーレン州のエッセン市にある民間のプロジェクト評価事務所にエンジニアとして勤務している。

中国国内で大きな話題となっている三峡ダムの崩壊可能性について、その王維洛氏がかつて語った内容を取りまとめると以下の通り。

(1)三峡ダムには洪水防止の機能はない。1989年6月4日に起こった天安門事件の後で、当時、中国共産党総書記であった江沢民は、人々を奮起させる目玉事業として三峡ダム建設計画を強引に推進し、中国共産党宣伝部に命じて嘘八百を並べ立てた。すなわち、2003年には「三峡ダムは“固若金湯(守りが非常に堅固)”で、1万年に1度の洪水を食い止めることができる」、2007年には「1000年に1度の洪水を防げる」、2008年には「100年に1度の洪水を食い止める」、2010年には「20年に1度の洪水を防げる」。このように、1万年に1度の大洪水を食い止めるはずだったものが、いつのまにか20年に1度の小洪水に縮小された。

(2)三峡ダムの工期は17年間にも及んだが、前期工程の施工品質は非常に劣り、三峡ダムの右岸部分や基礎の下部には空洞が比較的多い。これらの空洞はコンクリートを流し込んだ時にできたもので、当時コンクリートの攪拌や温度処理が十分でなかったために、熱膨張と冷収縮によって堤体の中に空洞が形成された。この空洞部分は後々にひび割れとなり、それが漏水を引き起こす。三峡ダムではすでに漏水が発生しており、その状況が深刻になればダムの廃棄を考える必要がある。

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