「ごめんなさい」が言えない親

Eさんは有名進学校に通っていた。しかし、大学には進みたくないと考えていた。それで母親と意見が対立した。「大学に行かないのなら家を出て行きなさい」と言われ、カリヨンにやってきた。

カリヨンでは、子どもの気持ちを文書にまとめ、親に伝えることにしている。 すると大概の親は「子どもがそんなに苦しんでいたなんて知らなかった」と言ってショックを受ける。「でも、そういう親は、『ごめんなさい』が言えない」と坪井さん。代わりに「そういうつもりではなかった……私はこういうつもりだったんだ!」と自己弁護に入る傾向がある。 

この母親も自分の考えを曲げず、「帰ってくるなら、私の言うことを聞きなさい」と言った。しかしEさんは家に戻らなかった。現在は自立援助ホームの支援を受け、働きながら通信制の大学に通っている。親のお金には頼らず、10 年かかってでも大学を卒業するつもりである。

「この選択は見事だと思いました。親元に戻っていつまでも服従するよりも、気高く自分の道を歩むことを選んだのですから」 

親の言いなりになって自分を殺して生きるより、貧しく苦労しても自分の足で生きる。その選択で笑顔が生まれた(写真の人物と記事は関係ありません)Photo by iStock

親に問いかけたい4つのこと

教育虐待に陥らないために、親は自分自身に次のように問いかけてほしいと坪井さんは訴える。

(1)子どもは自分とは別の人間だと思えていますか? 
(2)子どもの人生は子どもが選択するものだと認められていますか? 
(3)子どもの人生を自分の人生と重ね合わせていないですか? 
(4)子どものこと以外の自分の人生をもっていますか?

これができていないということは、親が子どもの人生に依存しているということ。「共依存から虐待は始まる」と坪井さんは指摘する。