2016年、名古屋市北区の自宅にて、受験勉強中に小学校6年生の息子を包丁で刺し、失血死させたとして殺人罪に問われている父親。7月19日にその判決が下る。「死に至らしめたのは事実だが、殺意は持ってない」初公判で起訴内容を否認した父親だが、それまでも受験勉強をめぐって暴力が続いていた。

教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、中学受験、高校受験の現場も多く取材してきた。そして「善かれ」「子どものために」と思いながらも、「誰の人生なのか」「誰が決める人生なのか」という視点が抜けてしまった親や教育者たちによる、「教育虐待」の現場も多く目にしてきた。

学や受験の「良い部分」を知り尽くしており、心理カウンセラーの資格ももつおおたさんだからこそ明確に見える「問題点」。多くの人たちに取材を重ね、一冊にまとめたのが『ルポ教育虐待 毒親と追い詰められる子どもたち』(ディスカヴァー携書)だ。「子どものため」のはずが、なぜ親に追い詰められる子どもたちが増えてしまうのか。

刊行を記念して、本書より数回にわたっておおたさんが見てきた「教育虐待」の実情を抜粋掲載する最終回は、名古屋のような悲しい事件が二度と起きないことを祈りながら、教育虐待の子どもたちを助け続けてきたシェルターの現状をお伝えする。

リスクは女子のほうが大きい

2004年、弁護士の坪井節子さんは仲間たちといっしょに「カリヨン子どもセンター」 を開設した。弁護士として、問題を起こしてしまった子どもの付添人などをするうちに、そういう子どもたちの背景には必ず虐待や不適切な育児があることに気づいた。子どもたちのためのシェルターが必要だと考えた。

シェルター開設から約 15 年の間に約380人を保護した。そのうち約3分の2 が女子だった。そのうち16〜17歳が約半分、14〜15 歳と18〜19歳がそれぞれ約4分の1。ただし、全国的に見ると女子のためのシェルターがほとんどで、男子の利用者は1〜2割と推測される。 

家出したときのリスクは、男子より女子のほうが圧倒的に大きいと坪井さんは指摘する。男子は家出しても、友達の家を泊まり歩いたりしてなんとかやっていくことができる。お金に困って窃盗したり万引きをしたりすれば最終的に保護されて、大人の介入が受けられる。 

しかし家出した女子が行き場もなくふらふらしていると、すぐに悪い男性が優しい言葉で近づき、自宅 やホテルに連れ込み、性的関係を強要する。さらにはそれを撮影し、脅し、少女の自由を奪う。あっという間に奴隷だ。決して大袈裟ではない。

行き場のなさそうな女子に近づいてくる人は多い Photo by iStock