年金削減→生活保護費の爆増…これからの日本で確実に起きる悲劇

この展開は避けられない
加谷 珪一 プロフィール

家族や親類も経済的に余裕がなくなっているので、こうした支援も受けられないとなると、最終的には生活保護を申請せざるを得なくなる。

2019年4月時点で生活保護を受けている人は約210万人だが、このうち55%が高齢者世帯である。高齢者以外で生活保護を受給している人の多くは、障害者と傷病者なので、こうした人たちを除くと、生活保護というのは限りなく高齢者ケアに近い制度といってよい。さらに言うと、高齢受給者の9割以上が単身世帯となっており、配偶者との死別や離婚などが生活保護の引き金になった可能性が高いと考えられる。

この状況で年金給付額を減らせば、それに比例して、高齢者の生活保護申請が増えるのは想像に難くない。つまり、年金減額を実施するのであれば、生活保護費の増加をセットで考えなければ、意味がないのだ。

 

年金、生活保護、財政は一体で議論せよ

公的年金は現役世代から徴収する保険料で運営されているが、実際には保険料収入だけで支払う年金をカバーすることは到底できない。現状では基礎年金の半額を国庫負担することが定められており、毎年、12兆円もの税金が投入されている(ちなみに消費増税分は原則として年金を含む社会保障費に充当されることになっている)。一方、生活保護は当然のことながら、全額、税金から支払われており、年間の予算は約3.8兆円である。

日本はさらに高齢化が進むので、年金を減額しても国庫負担はすぐには減らない。一方、年金を減額すると、ほぼ確実に生活保護費が増加するので、税金による支出は増加する。つまり、年金の減額というのは、公的年金の財政を改善する代わりに、一般会計の財政を悪化させる効果を持つ。

支出する会計が、年金特別会計なのか一般会計なのかというのは些末な問題でしかなく、結局のところ、全体のコストを誰が負担するのかという話になる。

公的年金の問題と所得再分配の問題(貧困問題)、そして財政問題はすべてがセットであり、単体で議論することはできない。その意味で、今回の年金2000万円問題は、国民的な議論をスタートするよいきっかけになると筆者は考えている。残された時間は少ないので、限りある富をどう再配分すべきなのか、徹底的に議論する必要があるだろう。

だが、状況はかなり心許ない。言論人の多くは世間の注目を集めたいのか、やたらと世代間対立を煽ったり、特定の組織や階層への感情的な批判を繰り返すだけの状況となっている。永田町を見渡しても、税と社会保障の抜本的な改革を主張している政治家はごくわずかしかいない。このままでは、生活保護費増加の問題が顕在化したタイミングで、再び感情的な議論となり、さらに理性的な解決策から遠ざかるという事態にもなりかねない。

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