年金削減→生活保護費の爆増…これからの日本で確実に起きる悲劇

この展開は避けられない
加谷 珪一 プロフィール

年金給付「150万円以下」の高齢者が大半

年金2000万円が大きな問題となったことで、世論は真っ二つに分かれている。先ほども説明したように、年金財政の現状を考えた場合、政府の対応など感情的な問題はともかくとして、年金の減額はほぼ必至である。だが、減額を実施すると、今度は別の問題が顕在化する可能性が高い。それは生活保護費の急増である。

厚生労働省は年金の給付額説明にモデル年金というものを用いている。これは厚生年金に加入した夫と専業主婦の妻という世帯が想定されており、現役時代の平均年収は約510万円となっている。現時点において、この世帯に支給される年金額は月額約22万円である。

だが、このモデル年金に相当する世帯というのは、極めて少ないのが実状である。

日本の場合、年功序列の賃金体系なので、若い時の年収は極めて低い。40年間の平均年収が510万円の労働者というのは、退職時には800万円以上になっている可能性が高いので、現実にはかなりの高給取りと考えてよいだろう。年金保険料を満額払っていない人もいることを考えると、月22万円の年金を受給できる人はそう多くない。

では実際のところ、今の年金受給者はどのくらい年金をもらっているのだろうか。

厚生労働省の調査によると、年金受給者のうち年間150万円以下の金額しか受給していない人は、何と全体の6割近くに達する。これはすべての年金受給者の平均なので、厚生年金(公務員共済)と国民年金のみの受給者をすべて含んだ数字である。

だが、支払う保険料が多い代わりに、年金受給額も多い厚生年金の受給者についても、半数が150万円以下、さらに高額な年金を受給していると考えられる男性の厚生年金受給者に限定しても、約3割が150万円以下である。年金だけで暮らせる高齢者は、全体のごく一部でしかないことが分かる。

 

生活保護受給者の多くが高齢者

年金問題は、世代間論争の様相を呈しており、若者と高齢者が対立するという図式になっている。相対的に今の現役世代が、高齢者よりも不利な状況に置かれているのは事実であり、筆者自身も高齢者から現役世代への所得移転を進める必要があるとの立場だが、高齢者がたっぷり年金をもらって余裕で暮らしているわけではない。

結局のところ、これは日本経済全体の問題であり、世代間対立を煽ったところで問題が解決するような話ではないのだ。

では、このような状態で年金給付の減額を進めていった場合、何が起こるだろうか。

全体の6割に達する150万円以下の年金受給者は、配偶者の年金を合算して何とかやりくりする、仕事を続ける、子どもや親類の援助を受ける、といった形で生活している可能性が高い。だが、ここで配偶者が死亡したり、加齢などによって思うように働けなくなると状況は一変する。

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