児童虐待は本当に「増加」「深刻化」しているのか

死亡事例・データから徹底分析
広井 多鶴子 プロフィール

虐待かどうか判断できない「疑義事例」

このように厚労省調査は警察よりも虐待の範囲を広く捉えているが、それでも虐待による死亡かどうか、判然としないケースがある。そのため、第6次調査からは、自治体が虐待かどうかを判断できなかったケースの件数が記載されるようになった。

そして、第13次調査からは、自治体が判断できない事例を専門委員会が再度検証し、そのうち虐待による死亡事例として取り扱うと判断した事例(「疑義事例」)については虐待として計上するようになった。次のようなケースが「疑義事例」とされる。

【第13次調査】(調査対象期間2015年度)
・虐待はあったが、司法解剖等の結果、傷害と死亡の明らかな因果関係はないと判断された事例
・虐待死の可能性があるとして保護者が逮捕されたが、不起訴(嫌疑不十分等)となった事例
・病院から「虐待」として通告があったが、警察は「事件性なし」として取り扱った事例
・ネグレクトであるとの判断が難しい事例

【第14次・第15次調査】(調査対象期間2016・17年度)
・死産ではない可能性が少しでもある事例
・事故以外(虐待)の可能性が少しでもある事例
・死因が不明である事例
・公判中の事例

このように、第13次調査では、主に虐待の疑いが持たれたケースが「疑義事例」とされていたが、第14次調査からは死産や事故など、明らかに虐待ではないと認められるケース以外すべて「疑義事例」として虐待死として扱われるにようになった。

こうした疑義事例の死亡児童数は、第13次調査8人、第14次調査21人、第15次調査23人。第15次調査では、疑義事例が虐待死全体の35.4%(65人中23人)、心中以外の事例では44.2%(52人中23人)を占める。そのうち、8人は出産当日の殺害である。

 

心中による虐待死のデータから見えること

図表6は、第1次調査から第15次調査を集計したものである。2003年7月から2018年3月までの14年半の間に、心中と心中以外による虐待死の件数は合計1115件、死亡児童数は1306人に上る。

そのうち心中は、件数では34.1%、児童数では40.3%を占める。警察庁のデータと同 様、殺害された子どもの4割は無理心中による。

同上「第15次報告」より作成

心中の場合、件数の割に死亡児童数が多い。図表6にあるように、心中では複数の子どもが殺害されるケースが少なくなく、1件当たりの被害児童数が多いためである。

また、心中ではそれ以外と比べ、殺害される子どもの年齢層が高い。図表7から分かるように、心中以外の場合は0歳が47.9%と半数近くを占めるが、心中では0歳は少なく、1歳から5歳までが36.8%、6歳から12歳の小学生が43.4%にのぼる。

同上「第15次報告」より作成