児童虐待は本当に「増加」「深刻化」しているのか

死亡事例・データから徹底分析
広井 多鶴子 プロフィール

厚生労働省による死亡事例に関する調査

次に、厚生労働省のデータを見て見よう。

虐待による死亡事例については、厚生労働省の社会保障審議会児童部会に設置された「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」が、自治体を通じて独自に調査を行っている。

2003年の事例を分析した第1次調査では、心中(未遂により親は生存したが、子どもは死亡したものを含む)は調査対象とされていなかったが、第2次調査から心中も虐待として集計されるようになった(図表5)。

それにともなって、虐待に関する分類も変わってきた。

第7次調査では、「虐待死」と「心中」に分けられたが、第8次報告書では、「心中以外の虐待死」と「心中による虐待死」と改められる。心中は虐待ではないという誤解が生じないようにするためだとされる。以後、今日までこの用語が用いられている。

 

厚生労働省の調査でも虐待死は減少傾向

図表5は、同調査が集計した死亡児童数の推移である。

これによると、死亡児童数は多い年は120人を超えていたが、近年は60〜80 人である (2017 年度は65人)。警察庁のデータと同様、2009年以降減少傾向にある。

なお、2003年の第1次調査の数値が少ないのは、対象とした期間が7月から12月までの半年間だからであり、2007年の数値が142人と特に多いのは、2007年1月から翌年3月までの15ヵ月を対象としているからである(2007年1年間では心中以外61人、心中52人、計113人)。

社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会「子ども虐待による 死亡事例等の検証結果等について」第 15 次報告(2019 年 8 月)より作成。データテーブルの 年は調査の発表年ではなく、調査対象の年または年度を表す。

このように、死亡児童数は厚労省の調査でも警察庁のデータでも、2009年以降減少している。もっとも、数値はかなり違い、2004年を除いて、年間10〜30件ほど厚労省調査の方が多い。

それは、集計の目的や方法が異なるからだろう。厚労省の同調査は、今後の再発防止策を検討するために、事件化されているかどうかに関わらず、虐待死と考えられるすべての事例を調査対象にしている。