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児童虐待は本当に「増加」「深刻化」しているのか

死亡事例・データから徹底分析

児童相談所「相談対応件数」増加の意味

厚生労働省が児童相談所の「相談対応件数」を集計するようになったのは1990(平成2)年からである(図表1)。

以来、この「相談対応件数」の集計結果が出るたびに、メディアは児童虐待が「増加」し、「深刻化」していると報じてきた。この数値が虐待の発生件数であるかのように捉えられているのである。

だが、児童相談所の「相談対応件数」は、虐待の発生件数ではなく、児童相談所が虐待として取り扱った事例の件数(回数)であり、いわば業務報告のようなものである。

したがって、通報が増加したり、児童相談所の業務が拡大したりすれば、数値は増加する。それが分かっているから、新聞も相談対応件数が増加したのは、児童虐待に対する社会の関心が増大し、顕在化するようになったからだと書くのだろう。

だが、それでも虐待が増加・深刻化していると書くのは、相談対応件数が増加している以上、実際に虐待の発生件数も増加しているはずだという「推測」が働いているからである。

では、なぜ相談対応件数の増加から、発生件数の増加や深刻化が推測できるのか。その根拠が重要なのだが、新聞も専門家もそれ以上は言及しない。

 

このような推測がまかり通ってしてしまうのは、児童虐待の発生件数の変化を示す客観的で長期的なデータが存在しない(しえない)からである。

しかし、虐待の発生件数を直接表すデータはなくても、推測の根拠となるデータはある。警察庁と厚生労働省の虐待死に関するデータである。

虐待はその捉え方によって数値が大きく違ってくるが、殺人や傷害致死、保護責任者遺棄致死などの死亡事件は、ある程度、数値を確定することができるからである。しかも、「暗数」が少ない。

その意味で、親(保護者)による子どもの殺害件数の推移は、虐待の発生件数の推移を推測する上で、最も参考になるデータと言えるだろう。

だが、虐待死もまた、捉え方が変わる。そして、それによって数値も大きく変化する。このことも合わせて、以下、虐待死に関するデータを見ていきたい。