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米中5G戦争「ファーウェイ潰し」が不可能といえるこれだけの理由

社員との一問一答から見えてくるもの

⇒前編【ファーウェイは本当に「悪の帝国」なのか…本社を訪れて確かめてみた】

ファーウェイを巡る「米中対決」

今週、講談社+α新書から、『ファーウェイと米中5G戦争』を上梓する。過去30年にわたって、東アジア情勢を論じてきた私にとって、28冊目の著書となるが、今度のテーマはファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)である。

「ファーウェイを知ると、5G(第5世代移動通信システム)が分かり、近未来の社会が分かる」

これがいつのまにか、「世界の常識」になってきた。だからこそ米トランプ政権は、しゃかりきになって「ファーウェイ潰し」に走っている。ファーウェイがこのまま疾走していけば、21世紀の覇権は中国に奪われてしまうと、危機感を強めているのだ。

中国は7月15日、今年第2四半期の経済成長率の伸びが6.2%だったと発表した。1992年に統計を発表しはじめて以降、最も低い数値だ。そのため、国際社会では中国経済に対する懸念が広がっている。

だが、当の中国は、ファーウェイと共に5G時代を切り拓き、中央突破を図ろうとしている。中国国家知識産権局によれば、今年上半期の発明特許件数は、ファーウェイが2314件でトップである。すでにファーウェイは、今後6年間の減免税措置を得ている。

そんなファーウェイは、先週7月12日、中国広東省深圳市の本社で、「2018年持続可能な発展報告」を発表した。これは、同社が過去10年にわたって毎年発表してきたもので、11回目の今年は、「数字包容」(デジタル普及)、「安全可信」(安全で信頼可能)、「緑色環保」(グリーンな環境保全)、「和諧生態」(生態との調和)を4つの持続可能な発展戦略とした。

 

ファーウェイの梁華輪番会長は、次のように述べた。

「ファーウェイは、5G産品の研究開発やシステム化の過程で、大量の技術革新を行った。半導体チップの設計、ソフトのシステム化、専門サービス、それに先進的なハード材料と熱発散技術において、大まかに言って5Gの基地局一つあたりのエネルギー発熱量を、業界平均の8割の水準まで抑えた。技術の不断の革新によって、エネルギー効率はさらに高まっていく。5Gは今後ますます、『エネルギー節約、グリーンな環境保全』の理念にマッチしていく」

ファーウェイを巡る「米中対決」は、6月29日に大阪G20(主要国・地域)サミットで、ドナルド・トランプ大統領が制裁措置の一部緩和に言及した。それを受けて7月9日、ウィルバー・ロス商務長官は、BIS(商務省産業安全保障局)の年次総会で、こう述べた。

「(トランプ)大統領がG20サミットで示した方針を実施するために、商務省としては、アメリカの安全保障に脅威がないと思われるものに関しては、今後許可を与えていく。だが、ファーウェイはエンティティ・リストに残し、商務省の許可が必要な品目、それに原則として不許可ということも変わらない」

5月16日にBISがファーウェイを「エンティティ・リスト」に入れたことで、アメリカの製品・部品・技術・サービスなどをファーウェイに輸出することは、実質上できなくなった。その後、5月20日に商務省は、8月19日までファーウェイと取引ができる「90日間時限措置」を発表。さらにトランプ大統領が大阪で「緩和発言」をした。

この発言の経緯について、ある関係国の高官は、次のように解説する。

「大阪G20サミットの帰路、トランプ大統領はどうしても板門店で北朝鮮の金正恩委員長と会談したかった。その映像が全米に流れれば、来年の大統領選挙に向けて大きなアピールになるし、これからイランとの対決を迎えるにあたり、米朝関係を改善させておきたかったからだ。

だが北朝鮮側は、『ハノイの決裂』から3ヵ月しか経っておらず、アメリカ側がワナを仕掛けてきたのではと疑心暗鬼になり、金正恩委員長も板門店会談をなかなか決断できなかった。そこでトランプ大統領は、中国の習近平主席を頼った。

中国はこの話に乗った。条件は、米中貿易戦争の一時休戦と、ファーウェイに対する制裁の一部緩和だった。トランプ大統領は中国側の条件を了承。そこで習近平主席は、G20の前に平壌へ飛び、金正恩委員長を説得した。

その結果、習主席が『保証人』になることで、金委員長は板門店にやって来た。そして大阪の米中首脳会談で、貿易戦争を休戦。その後、トランプ大統領は記者会見で、ファーウェイへの制裁を一部緩和すると述べたのだ」

何でも「ディール」(取引)の材料にしてしまうところが、トランプ大統領の強みでもあり、恐さでもあるが、ともかく世界の市場には、一服の安堵感が湧き起こった。だが7月に入って再び、ワシントンの対中強硬派が巻き返し、「8月19日」を巡って、せめぎあいが続いている。

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