ついに「シェアハウス」に子供が!

そのうちSM嬢と暗黒舞踏家は同じ部屋に暮らしはじめ、子供が生まれた。彼女は親との関係がそれほど良くないようで、暗黒舞踏家の実家にしばらく暮らしていたが、やはり落ち着かなかったらしく数カ月後にはシェアハウスに戻ってきた。

うわー! ついにシェアハウスで子育てが始まるのか! よーしみんなで協力だ!

……残念ながらそんなふうにはならなかった。

面白いとは思ったけれど、ぼくらは他人の子供に興味が持てなかった。SM嬢のほうも、積極的に他人に子育てを任せるということをしないタイプだったので、なんとなく「シェアハウスに新しい住人が増えたなあ」という程度の温度感だった。

SM嬢の部屋が一階のはなれだったせいか、赤ちゃんの泣き声が聞こえたという記憶もあまりない(半年くらいの子供が泣かないはずはないので、夜泣きをしていたはずなのだがまったく記憶にないのが不思議だ)。

そしてぼくにも子供が

子供がやってきて2ヵ月目くらいの時期だろうか。2011年の3月11日、あの地震が起きた。

うちは和風の古い家屋だったにもかかわらず被害はほとんどなかった。その日以降、東京ではコンビニから食料や水がなくなったり、だんだんと原発の危うい話が聞こえるようになった。SM嬢は子供への影響を気にして、食品を海外から輸入しはじめるなど、精神的にはりつめているように見えた。今考えると当然にも思える。ネットには連日連夜不安をあおるような情報ばかりが流れていたし、小さな子供を持つ親は正気ではいられなかっただろう。

そんな地震の混乱が終わらぬ2ヵ月後、ぼくとつきあっていた浪人生のあいだにも子供が生まれる。結果的にひとつのシェアハウスで二組の家族が生活することになった。このときのメンバーはSM嬢と暗黒舞踏家+子供、ぼくと浪人生+子供、プリンス、デッサンモデルとその彼女の合計10人だったと思う。

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ひとつのシェアハウスにこれだけの人間が住んでいるのは、今考えるとちょっと異常な気もするが、ウチは案外広い一軒家だったので、プライバシーは確保できていたし、それほど不便もなかった。ただ、SM嬢の部屋にはエアコンがなかったので、暑い日には、ぼくらの部屋に彼女たちが涼みにくることがあった。

そんなある日、事件が起きた。