古代のファラオも現代人も魅了する「植物の香り」3000年の秘密

NOMAの「植物偏愛教室」

5月になるたびに住宅街に舞うジャスミンの香りは、エステル類とアルコール類の分子たちを多く含む。そのため、私たちの気持ちも落ち着かせうっとりさせてくれる。

私は定期的に、依頼を受けて植物の精油で調香作業をしているが、ラベンダーとサンダルウッドをブレンドし、それにちょっとジャスミンを足して作った香水は、働く大人の女性にすこぶる人気が高い。

調香Photo by NOMA

そして調香作業を通じて気づいたのだが、調香を依頼してくる人の「好きな香り」は、その人の体質や環境をサポートする成分を持ち合わせていることが多い。

もちろん、あくまで個人的な経験に基づいたデータでしかないが、これはよく驚かされる事実でもある。

最近では、逆算するように生活環境やパーソナリティを先に聞いてみてから、それに合わせた精油を調香エッセンスとして盛り込むことも多くなった。

「明るい気持ちになれた」「商談が続けて決まった」などのコメントが返ってくるとやはり嬉しい。

3000年以上も使われる秘密

国内外問わず多くの史実が示しているとおり、私たち人類は、文明が始まって間もないころから植物の香りに心を奪われてきた。

メソポタミア時代では杉(レバノン杉)、古代エジプト時代ではフランキンセンス(乳香)が焚かれ、人々は宙を目指すように上へと伸びゆく煙の姿を見ては、天と繋がる時間を分かち合った。

香料を表す「perfume」という言葉は、ラテン語の 「per(通して)」と「 fumum(煙)」が由来となっている。語源を通じても、人類と香りの関係のルーツをたどることができるのだ。

驚くべきことに、この植物の天然の香りは、3000年以上の時を越えて人類の前に現れることもある。

古代エジプト時代のお墓の中にあった香膏壷やミイラがまさしくその例で、発掘されたときにまだ香りを放っていたとされる。なんという浪漫なのか。

ミイラルーブル美術館で撮影したミイラ Photo by NOMA

ことに、古代エジプト人の香料オタクぶりは有名。

彼らは日の出にフランキンセンス、正午にはミルラ、日没にはキフィ(さまざまな香料植物を混ぜたもの)と、1日に3回、太陽神ラーに香りを捧げた。食事と同じペースで、生活の中に香りを捧げる時間が根ざしていた。

当時金よりも高価であったフランキンセンスはα-ピネン、リモネン、サビネンなど、モノテルペン炭化水素類(炭素10個と水素から構成される)を多く含む。抗菌、鎮痛、抗鬱に対して勧められ、精神的にも深い鎮静とリフレッシュへ導きやすいとされている。