このゴミ山を航空写真で見ると、いびつな長方形になっている。
入り口からの奥行きはおよそ1300m。幅は500m。山の標高は目測20m〜30m。
トラックがすれ違えるギリギリの幅で道が一本奥へと続いている。
道の足元も、左右にそびえるおよそ垂直の壁も、その上に続く稜線も、全てがゴミでできている。あらゆる場所からゴミの自然発火による煙が立ち上り、時折炎が噴き出している。
ぐるりと周囲を見回して、目に入るゴミでないものといえば、そこら中でゴミを引っ掻き回している人間と、大量のゴミを運びこんでは去って行くダンプカーと、そしておびただしいほどの鳥だ。
ダンドラを訪れて誰もがまず驚くのは、あまりにも多く、あまりにも巨大な鳥だろう。
ハゲコウというコウノトリの一種で、体長は130cmほど。首から上には羽毛がなく、長いくちばしの下の喉にはだらりと赤い袋が30cm以上も垂れ下がっている。
こいつもまたスカベンジャーである。
屍肉、腐敗した有機物、糞便を食す。ハゲワシと同様にこのハゲコウも首から上の羽毛がないのは、動物の死骸に首を突っ込みやすくするためだと考えられている。
そしてこの巨大な鳥が、見渡す限り、道の真ん中から山の上、そして遥か上空まで何万羽もいるのである。
“地獄”に見える。
吹き出す業火、目鼻を指す煙と臭気、屍肉を喰らう動物、ゴミを漁る人間――。
しかし僕はこの後、このゴミ山の最深部で生きる青年に出会い、ここが必ずしも地獄でないことを知った。
この山の美しさと、豊穣さに心を打たれた。
出会ったのは、2畳ほどのスペースのゴミを掘り、トタンの屋根をかけた空間を“洞窟”と呼び暮らしている18歳の青年ジョセフ。
一人として、ここに来たくて来た者なんて存在しない。
誰もが流れ流され、ここに漂着した。
そして、今日を生きるために、知恵を絞り、肉体を用い、時に笑った。
彼らは今日、何を食うのか。
全ての顛末をここに書くことは難しい。
僕がこの地で過ごした数日間は、今夜21時から放送する「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」(テレビ東京系)に詰め込んだ。
飯から世界が見えてくる。
絶対に損はさせません。