地獄か…「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」制作秘話

あなたは「スカベンジャー」をご存知か
上出 遼平 プロフィール

海外のメディアに登場することはほとんど無い。ある日、僕は深夜のネットサーフィンをしていると、ケニアのテレビ局のニュース映像をたまたま目にした。

そのニュースの内容はこうだ。

“バトル・フィールド”と呼ばれるナイロビ東部のダンドラゴミ集積場でギャングの抗争が発生、数人が死亡した。
周辺住民の話によれば「事件当日未明、いくつかの銃声と助けを求める叫び声が響いた。朝、無造作に転がるひどく損傷した遺体を発見した」とのこと。被害者は若い男で、銃で撃たれた後、山刀で切りつけられ、火をつけられて殺されていた。両ギャングは銃、弓矢、山刀で武装している。
抗争の原因は長く続くゴミ集積場の利権のトラブルによると思われる。

ダンドラ・ゴミ集積場は、ケニア最大のゴミ集積場だ。

25haにも及ぶ広大な敷地に、1日850トンものゴミがナイロビ中から運び込まれる。

そしてそのゴミを求めて集まって来る人間は1日3000人以上と言われ、ゴミ集積場の周囲にはトタンの家が密集するスラムが形成されており、この辺り一帯がダンドラエリアと呼ばれている。

この危険地帯の、そのまたど真ん中のゴミ山に暮らす人間たちがいる。

そんな情報を得た僕はコロンビア製の薄い防弾ベストをシャツの中に仕込んで、3台のカメラを手にダンドラへ向かった。

 

シンナーを吸っている子どもたち

ディボゴと僕を乗せたボロボロのトヨタ・カムリはナイロビを東へ走っていた。

車窓の外に、ペットボトルを口にくわえてとろけた目をした子どもたちが現れては去っていく。シンナーを吸っているのだ。

道端の靴修理屋から、靴底を貼り付けるためのゴム糊を買ってマイペットボトルに補充する。500mlのペットボトルの底に2cmくらいのゴム糊で大体20円。これで1日吸っていられる。

シンナーを吸っているうちは空腹を感じにくい。飯を買って腹を満たすよりよっぽど安上がりなのだ。

ペットボトルからシンナーを吸っている(C)テレビ東京

「窓、窓上げて」とディボゴが言う。扉についたハンドルをグリグリと回して窓を閉める。

「カメラとか盗られちゃうから」と言ってディボゴは手を伸ばしてカメラを掴み取るジェスチャーを示した。ナイロビではよくある盗みの手口のことを言っているのだ。

ナイロビの渋滞は世界有数と言われる。この渋滞で車の速度が落ちているところに、強盗が忍び足で近づき、窓から金品を奪って走り去るのだ。

とは言うものの、「スマッシュ&グラブ(窓を割って中の物をつかみ出す)」なる手口も一般化しており、窓を閉めたところで奇襲を防ぐことはできない。目立たないことだけが身を守る術だ。

「そろそろ着くはず」。ディボゴが2世代ほど前のiPhoneを片手に窓の外をキョロキョロと見渡しながら言った。

僕も一緒に見回すけれど、ゴミ集積所らしきものは見当たらない。

ディボゴもケニアに生まれてもう60年ほど経つが、このゴミ集積場に近づいたことはついぞなかったという。