地獄か…「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」制作秘話

あなたは「スカベンジャー」をご存知か
上出 遼平 プロフィール

スカベンジャーとは第一義的に腐肉食動物のことである。

読んで字のごとく、腐った肉を食う動物。ハイエナやハゲワシ。

それはサファリツアーで積極的に写真を撮ろうとするような存在ではない。ライオンが襲ったシマウマの残骸を狙う者たちだ。そしてここアフリカには、もう一種のスカベンジャーが存在する。

ゴミから生活の糧を得て暮らす人々――。ナイロビでスカベンジャーと言えば彼らのことを指す。

そして一般的にその呼び名には、蔑みの視線が含まれている。

僕はゴミ山のスカベンジャーに会いに来た。彼らの飯を見に来たのだ。

(C)テレビ東京

“バトル・フィールド”でギャングの抗争

「ゴミ山では殺人事件が起こります」と男が言った。胸に「安川電機」と書かれた青いナイロンブルゾンを着たこの男の名はディボゴ。今回の通訳をお願いした、60歳手前のケニア人だ。

僕のロケに同行してくれる現地人は多くない。普通は見て見ぬ振りをして、避けて通る世界にわざわざ踏み込んでいくのが僕の番組だ。

けれどディボゴは知ってか知らずかロケの同行を快諾してくれた。言葉選びに時間はかかるが、丁寧な日本語を操る誠実な男だ。

「ゴミ山の利権を巡ってギャング同士が争っているんです。人が殺されても犯人が捕まることはありません」

 

僕らは「ダンドラ・ゴミ集積場」に向かっていた。ダンドラは治安が悪いナイロビでもトップ3に入る危険地域だ。

他にも、銃の密輸入と転売で荒稼ぎするソマリア人居住区のイースリーエリアや、「パンガニ6」なるギャングが縄張りとするパンガニエリアはここ数年きな臭さが増している。

しかし日本のメディアで取り上げられるナイロビの“ヤバい場所”と言えば「キベラスラム」一択だろう。確かに“アフリカ最大のスラム”の称号(?)を恣にするキベラは奥深き危険に満ちている。

キベラスラム 〔PHOTO〕gettyimages

しかし、これはダークツーリズムの食べログ1位みたいなもので、もはや面白みがない。外部の人間を迎えることに慣れたコミュニティはさながら人気観光地のガイドが旅行客を迎えるように、案内のルートは定型化し、使う言葉は芝居がかる。

ここで“用意されたキベラスラム”をくぐり抜け、もっと何層も地下で揺曳するキベラの妖艶な姿態に触れるには、相当な覚悟とスキルと時間を要するのが自明だ。

その点、ダンドラは違った。