旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、作家・画家の大宮エリーさんに選書してもらいました。

なぜ? 人は旅に出るの?

なぜ人は旅に出るのか。人生というものは大きすぎて、普段は捉えづらい。渦中にいすぎて。そういった人生を、生々しく感じ取れるように旅があるんだと思う。それが、私が思う、人が旅に出る理由。人生って、そういえば、ワクワクする連続なはずなのだ。なのに私たちは年をとればとるほど、雑多な心配事が多くなり、日々の中の金平糖のように輝く、きれいなワクワクに鈍感になる。

『ハリスおばさんパリへ行く』を読むたび、私たちはワクワクと隣り合わせなことを知る。家政婦のおばさんが、仕事先のクローゼットにあるディオールのドレスに憧れてパリへ旅に出るのだから。おばさん、えらい!

ハリスおばさんパリへ行く
ポール・ギャリコ 著 亀山龍樹 訳/復刊ドットコム(2014)
ロンドンに暮らす家政婦のハリスおばさんは、高級ドレスに憧れてパリへ! 時代は1960年代。旅の楽しさの本質が詰まった物語。

赤ちゃんが、何かにつけ楽しそうに笑う理由は、『イギリス正体不明』で紐解ける。たぶん赤ちゃんは「なんだこれ?」で頭の中がいっぱいなのだ。人は、なんだこれ? に出会うとワクワクする。旅に出て、それに出会うコツを教えてくれるのがこの本だと思う。ガイドブックなんていらないのだ。

イギリス正体不明
赤瀬川原平 著/東京書籍(1994)
芸術家・赤瀬川原平の「読む写真集」第2弾。次々に現れる用途不明の物や風景。地球上に散らばる不思議に気づかせてくれる本。

『霧のむこうのふしぎな町』の主人公は夏休み、不思議な町に迷い込む。その町の住人は全員、魔法使いの子孫。3週間その町にいたのに、戻ってきたら、半日しかたっていないのである。2泊3日の旅でも、一生分の真理が見つかることがある。旅自体がもうファンタジーなのである。だって生活から私たちを切り離し、夢想する時間をたっぷり与えてくれるのだから。

霧のむこうのふしぎな町
柏葉幸子 作 杉田比呂美 絵/講談社青い鳥文庫(2004)
小学6年生の女の子、リナのひと夏の冒険は、大人の想像力をも刺激する。映画『千と千尋の神隠し』にも影響を与えた名作。

PROFILE

大宮エリー Ellie Omiya
1975年大阪生まれ。広告代理店を経て、2006年独立。作家、脚本家、映画監督など多岐に活躍。画家として絵画作品も発表している。

●情報は、2019年7月現在のものです。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida