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# 近代 # 新反動主義 # 民族未来主義

エスノフューチャリズムの「反動的」で「解放的」な未来?

ターボフォークに見る新しい第三の道

新反動主義とコンテンポラリー・アートの親和性

2001年、ウィーン芸術週間。キュンストラーハウスの舞台上を、豊かな黒髪を振りかざし、ミニスカートから豊満な肉体を惜しげもなく露出したドラガナ・ミルコヴィッチ(Dragana Mirkovic)が、セルビア語のヒットソング「Sama」を披露する。セルビアのターボフォークを代表するこの歌姫は、国際的アートフェアに集まった聴衆を前にこう叫ぶ。「これが現代芸術よ!」

ターボフォークと呼ばれる音楽ジャンルがある。バルカン半島に伝わるブラスバンドやロマ音楽といったエスニック音楽の要素をサンプリングし、ユーロビートなどの電子音楽に落とし込んだ大衆的なダンスミュージックだ。

往往にして金権主義的でセクシスト的な記号を用いるターボフォークは、大衆的で「悪趣味」だとか、あるいは時としては――その音楽シーンがセルビアにおけるオルタナ右翼との深い親和性をもつことから――セルビア国粋主義者の「危険な音楽」としても知られてきた。

だからこそ、ウィーン芸術週間におけるターボフォークのパフォーマンスを企画したセルビア人アーティスト、ミリチャ・トミッチ(Milica Tomic)はこのことによってオーストリア・セルビアのメディアで好奇と非難の目に晒されることになったのだった。

 

社会主義国家ユーゴスラビアの解体、そして99年まで続いたユーゴ内戦の混乱期を経たセルビアは、コソボ問題など未だ課題を抱えてはいるものの、徐々に西ヨーロッパ型のリベラルな民主主義社会への移行が達成されるのだと期待されてきた。

しかしセルビアにおいて、市場型資本主義社会の本格的な到来がもたらしたのは、時に「ワイルドな資本主義」と称される激しい格差の増加と、西側的な「ふつう」への包摂を頑なに拒むかのように表出する「バルカン的なもの」の再来であった。

ユーゴ紛争の際には西欧社会によって「悪玉」に仕立てられ、さらにNATOによる空爆によって西洋社会から裏切られたのだという国民感情は、セルビアの文化的アイデンティティにねじれた構造をもたらしている。

例えばセルビアを代表する映画監督エミール・クストリッツァは近年おおやけにロシアの大統領ヴラジミール・プーチンを称揚しているし、2019年1月にプーチンがベオグラードを訪問した際にも、彼と握手しセルビア・ロシア間の揺るぎない友情を語ったのだった。