いくらファーウェイを叩いても、中国は2040年「世界一の大国」になる

「歴史の正常化」が米中経済戦争の本質
野口 悠紀雄 プロフィール

日本が持つべき焦燥感

アメリカは焦燥感を持ち、対処策を実行に移している(その方策が適切なものか否かは、大いに疑問があるのだが)。

しかし、本当は、日本も焦燥感を持つべきなのである。

なぜなら、中国企業の動向や中国の経済政策によって、日本企業が大きな影響を受けるからだ。

ファーウェイは多くの日本メーカーから電子部品などを調達している。2018年の調達額は約7260億円だ。これらのメーカーは、ファーウェイが調達しないようになれば、大きな影響を受ける。

影響はファーウェイ問題に限らない。例えば、経営危機に陥った液晶メーカー、ジャパンディスプレイを支援する中核は、中国と台湾のグループだ。この過程で、中国政府の意向が影響を与えると言われる。

中国の成長は今後も続く。2040年頃には、中国のGDPはアメリカを抜いて世界一になる。1人当たりGDPでも、中国は日本と同水準になる(ということは、それ以降は、中国のほうが日本より豊かな国になるということだ)。

変化は急ピッチだ。中国人が日本に働きにくるのではなく、逆に日本人が中国に出稼ぎに行くようになるだろう(いまのところ香港やシンガポールが中心だが、金融やハイテクの分野では、既にそうした動きが生じつつある)。

日本は、このような変化にどのように対応すればよいのか?

中国企業に対抗しうる日本独自の産業とはどのようなものかを、真剣に探っていかなければならない。

 

歴史の正常化?

ある年代以上の日本人には、以上で述べたような構図を受け入れられない 。「中国は貧しい国」という固定観念に凝り固まっており、そこから脱却することができないのだ。

しかし、よく考えてみれば、上で述べた未来図は、異常なものでない。それどころか、長期的な歴史の中では、むしろ正常なものかもしれない。

中国は、人類の長い歴史を通じて、世界で最高の科学技術を持っており、世界で最も豊かな国だった。

ところが、中国は、18世紀半ばから19世紀にかけての産業革命に適応することができなかった。このため、世界の変化に取り残された。とりわけ、アヘン戦争(1840~42年)以降の凋落は著しかった。

しかし、この期間(これまでの200年間程度の期間)は、むしろ異常だったのではないだろうか?

いま歴史は、正常な過程に戻りつつあると考えることができる。

しかし、ことは簡単ではない。世界標準として認めるには、中国の国家体制はあまりに特殊すぎるからだ。我々は、この矛盾をどう解消していけばよいのだろうか?