いくらファーウェイを叩いても、中国は2040年「世界一の大国」になる

「歴史の正常化」が米中経済戦争の本質
野口 悠紀雄 プロフィール

なぜファーウェイを叩き潰そうとするか

ファーウェイを叩き潰したところで、通信機の生産がアメリカ国内に戻り、雇用が増えるといったことは生じない。アメリカ国内には、もう通信機器を作るためのサプライチェーンもないし、技術者(とくに、現場の中級技術者)もいないからだ。

では、アメリカはなぜファーウェイを潰そうとするのか?

 

その根底にあるのは次のような認識だろう。

「経済活動の基本を握る企業が中国で成長するのを認めれば、未来世界のヘゲモニーは中国に奪われる。しかしそれを許すことはできない。だから、いまのうちに叩き潰しておかなければならない」

国家安全保障上の問題が理由にされているのだが、先端的な企業が成長することそのものに対する焦燥感が強いのではないだろうか。

ファーウェイ叩きの理由としては、中国における5Gの発展を遅らせる、「中国製造2025」戦略を頓挫させる、などが指摘される。確かに、これらは重要だ。しかし、根本的な理由はそれだけではなく、もっと広範なものだ。

だから、これは高率関税とは別の動きだ。

高率関税の掛け合いは、全く馬鹿げたものだ。特に対象が全貿易額に拡大されれば、アメリカ国内での物価上昇を招くことになる。こうしたことに対して、アメリカの企業や消費者の団体は、すでに反対を表明している。これは、トランプ大統領の経済に関する無知の結果としか言えない政策だ。

しかしファーウェイ叩きは、これとは性質が全く違う。トランプ大統領一人の気まぐれの結果ではなく、アメリカの総意を表していると考えることができるだろう。
 
ただし、中国は、これに対して対抗措置を講じた。

第1は、「信頼できない外国企業リスト」の作成。第2は「レアアースの輸出制限」である。

「信頼できない外国企業リスト」に入れられて中国との取引を禁じられると、当該企業には大きな問題だ。インテルは、営業収益のおよそ4割を中国で得ているし、クアルコムは収益の6割を中国に依存している。中国がApple禁輸を行なえば、Appleの収益に甚大な影響が及ぶ。アップルの最終組み立て工場が中国にあることも問題だ。

レアアース(希土)とは、光学材料や電子材料、強力磁石などに不可欠な原料だ。中国の生産シェアが非常に高いため、中国が禁輸措置をとれば、大きな影響がある。