英雄でない人の想いが大きな河になる

『いだてん』は大河ドラマらしくない」という理由でそっぽを向く従来の大河ファンも多いと聞く。しかし、名のある武将でも英雄でもない人たちの情熱が、夢の雫が、小さな流れとなって交わり合い、勢いを増し、やがて大きな河となって時代を動かしていく。合戦も天下取りも明治維新もなかろうと、それは立派な「大河ドラマ」なのではないだろうか。

2020年の東京オリンピック開催が決定したのは、2013年の9月だった。東日本大震災からは2年半。まだ多くの人たちが避難生活や仮設所生活を送り、被災地の復興はまだまだこれからという時だった。正直、オリンピックなんかよりも被災された人たちのために税金を使ってほしいと思ったし、今もその気持ちに変わりはない。でも、『いだてん』のおかげで、来年にせまった二度目の東京オリンピックは、やはり世紀の大イベントであり、多くの人たちを勇気づける意味のあるもの……と思えるようになった。
 
今から100年ちょっと前、たったふたりの日本人選手が初参加するのに四苦八苦だったストックホルムオリンピック。そこから始まった日本スポーツ界の世界への挑戦。女子スポーツ選手たちの自我の解放と闘い。1940年に東京で開催されるはずだった幻のオリンピック。第二次世界大戦を経て、戦後日本の復興の象徴となった、1964年東京オリンピック……。
 
ちなみに、1964年大会のメインスタジアムであった国立競技場の前身は、明治神宮外苑競技場。関東大震災の時に被災者の避難所となり、あの復興運動会が行われた場所だ。2020年には、その場所に建て替えられた新しい競技場がメインスタジアムになる。そんな予備知識を持って来年のオリンピックに臨めば、きっと何倍も楽しむことができるだろう。

「#絵だてん」に投稿された「祝・第一部完走! イラスト/星崎真紀@hoshizak

折り返しの第二部も面白いのか

 『いだてん』は7月に折り返し地点を迎え、第二部がスタートしたばかりだ。時代は大正から昭和に移り、「日本にオリンピックを呼んだ男」と言われる田畑政治を主人公に、1964年の東京オリンピック招致に向けての物語が描かれる。

実を言うと、第一部のクライマックスがあまりにも素晴らしかったために、第二部は、それを上回ることができるのだろうか?と、少しだけ危惧していた。が、そんな心配は無用だった。今の所、まだ第二部は2話分しか視聴していないが、ぶっちぎりで面白い!阿部サダヲ演じる新主人公「河童のまーちゃん」が、四三とは正反対のマシンガントークと愛嬌とハイテンションで大暴れだ。人見絹枝にスポットを当てた第26回は、女優初挑戦のダンサー、菅原小春さんの熱演もあって、ネット上では「神回!」と話題になった。
 
日本人選手たちが世界で躍進する一方で、日本は戦争へと向かっていく。件の神宮競技場は、第二次世界大戦中に、学徒出陣の壮行会が行われた場所でもあるのだ。『あまちゃん』『いだてん』で震災と向き合ってくれたクドカンが、今度は20世紀最大の災禍である「戦争」をどう描くのか……。予想の斜め上をいくドラマを見せてくれるのではないかと期待している。
 
ところで、念のために言っておくが、この記事はNHKに依頼されて書いている「提灯記事」ではない。頼まれてもいないし、お金ももらってないのに自主的に書いているのだ。なぜって? それは、「いだてん面白くない」という人たちの気持ちもわかるからだ。そして、そんな私が、今では「いだてんに夢中」だからだ。
 
「真剣に集中して観なければ面白さがわからないようなドラマは、そもそも失敗なのだ」と言われてしまえば仕方ない。だけど1週間に45分間、真面目にテレビの前に(PCでもタブレットでもいい)座って観る価値が、このドラマにはあると思う。
 
人には好みというものがある。もちろん真面目に観ても「つまらない」と思う方もいるだろう。だけど、視聴率が悪いからと言って、観もせずに「駄作」と決めつけるのは残念すぎる。一時は脱落しかけていた視聴者の言葉だからこそ、信じてほしい。
 
まだ間に合う! 途中参加でも大丈夫です! 「東京2020オリンピック」を楽しむためにも、あと半年、『いだてん』と一緒に走ってみませんか?