『あまちゃん』に続き描いた震災

特に第一部、金栗四三編終盤の数回は、圧巻としか言いようがない。
 
女子校の教師となった四三。最初は「運動なんてしたらお嫁に行けなくなりますわ」と眉をひそめていたお嬢さま方は、四三の暑苦しいまでの熱意にほだされ、次第にスポーツの楽しさに目覚めていく。男性上位の思想に縛られていた少女たちが、生き生きと自我を解放していく描写には拍手喝采だ。

 一方、その頃、第一部のもうひとりの主人公とも言える日本スポーツの父・嘉納治五郎が長年夢見ていた神宮外苑競技場が、ついに完成しようとしていた。だが、そんな時、関東大震災が首都を襲ったのだ。

6月23日放送だった震災後のシーン。「号泣!」「神回!」と評判を呼んだ NHK『いだてん』HPより

クドカンが震災を描くのは『あまちゃん』に続き二度目だ。『あまちゃん』では主要キャラクターに犠牲を出さぬまま見事に東日本大震災を描いてくれたが、『いだてん』では、重要なキャラクターのひとりが被災して行方不明になってしまう。四三に憧れて陸上選手を目指していた女性、シマちゃんだ。
 
関東大震災は、死者・行方不明者約11万人。浅草、日本橋など、広範囲にわたる街が火災で焼失した。変わり果てた街、焼け出された人々を前になすすべもなく立ちつくし、己の無力さに絶望した四三は、郷里の熊本に帰る。そこで家族の言葉から自分が何をすべきかを悟るのだ。
 
そもそも人間は無力たい。じゃけん、何も考えんで、今までん通り、馬鹿んこつ走ればよか!
 
東京に戻った四三は、救援物資を背負って走る、走る。そんな彼の姿に力づけられた人たちが、笑顔になっていく。そして、被災者の避難所となっていた神宮外苑の競技場で行われる復興運動会。それまでコツコツと積み上げてきた伏線や様々な人の想いが、すべて繋がり、結実する、怒涛のような第一部クライマックス……!!