身体障害1級

障害者手帳を取得すると会社の規定で車通勤が許される、とときどき車できているのに気付いた総務から言われた。

連載の担当をしていたW先生は作家になる前は整形外科の医者だった。膠原病科やリウマチ科がない頃は、整形外科で診てもらう場合が多かったので、リウマチのこと、薬のことを聞いていた。

会社に障害者の届けを出すようにすすめられているとW先生に話した。

僕は反対だ。会社に障害者の手続きをするとルートから外される。組織とはそういうものだ

と言われた。私はピンとこなかった。

身体障害者の手続きのため、O先生に診断書を書いてもらう。指、腕、脚の動く角度を調べていく。右手の握力はゼロ、左手はかすかに動いた。右は親指の先が人差し指の第1関節にしかつかない。左手は人差し指と親指がほぼ平行になっているため、動かすと2本の指がくっつく。しかも人差し指は、第2関節が棒状になって曲がらない。先生は身体の状態を細かく記入していく。

診断書を区役所に提出した。「慢性関節リウマチによる両上肢機能障害、両下肢機能障害。身体障害1級」と通知がきた。会社に書類を提出。裏口にある駐車場の使用が許可され、ガソリン代の1部が交通費として支払われる。状況によって、タクシーの使用も認められた。

突然、編集長から呼び出され、「いつ具合が悪くなるかもしれないので、責任ある立場には置けない」と言われた。私は次長の肩書はそのまま、新入社員の時に教えた後輩に指示される立場になった。

「作家のTさんにインタビューを依頼してほしい。文化人の方に話を聞きたいページが決まらなくて。すぐに話を聞かないと校了に間に合わないから連絡をお願いします。担当は〇〇さんです」。それならば、担当者が依頼すればいいと思った。私はTさんと何度も仕事をして地道に信頼関係を築いてきた。急にお願いすれば、誰かが断ったので、応急処置のため、便利に使われていると受け取られるだろう。私も便利に使われていた。

仕事は会社の名前でやるが、会社の名前だけで信頼は生まれない。「責任のある立場に置けない」ということが、「自分が大切に積み重ねてきた信頼を後輩に安易に利用される」ことになるのはなぜなのかわからなかった Photo by iStock

原稿は後輩の確認が終わらないと入稿できない。情報ページの担当がふってくることもある。私は特集班や読物班というグループに属さず、いろいろな記事に状況によって携わることになった。表紙と連載は写真家や作家との良好な関係を維持するため、担当はそのままである。

障害者になれば扱いが変わる」、W先生から言われた意味がわかった。所属していた雑誌は、障害を抱えながら活き活きと仕事をし、活躍している人の応援記事を掲載している。しかし内部にいれば違った。

私のモチベーションは下がった。意欲を失った。うつ状態になった。痛みが増していった。仕事が楽しくて、熱中するとストレスを発散できていたのに、仕事がストレスになっていた。睡眠障害はひどくなり、睡眠導入剤を飲んでも眠れず、量を増やした。

この状況を、体調をよくするための会社側の配慮と前向きに考えればよかったのだが、当時の私にはまったく余裕がなかった。障害者の手続きの前と後で違いすぎた。36歳、未熟だった。